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  研究者にとって難しいのは、研究活動を続けていくために必要な資金調達の部分。これは民間企業に限らず、大学や公的な研究機関にも共通している。不況や政府の財政難は、研究者の活動にも影響を与えており、彼らのワークスタイルにも変化が訪れている。
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モノ作り立国の頭脳となる
研究者の育成と資金調達ルート
written in 2011/1/24

 いわゆる「街の発明家」というと、次々と新しいアイデアを考案して珍しい物を製作しているが、暮らしぶりは決して豊かではないというイメージがある。日本人の研究心や手先の器用さは世界でも屈指だが、その技術を収益化することについては得意とは言えない。

発明から収益を得るには、特許出願をした上で製品化したり、他社に技術を有償で売ることになるが、特許の出願〜取得、そして権利の維持にかかるコストは、発明者がすべて手続きを自分で行う場合でも、特許庁に支払う費用だけで約30万円、専門家(弁理士)に依頼するのであれば80万円前後をみておく必要がある。

それでも、せっかく取得した特許から収益が得られる保証は無く、技術を生み出すまでに投じた研究費も含めれば、多額の資金がかかるため、発明に没頭することはなかなか難しい。それは、企業の立場にも言えることで、不況で業績が伸び悩めば、研究に投じられる予算も限られてくる。

総務省の調査によると、日本の科学技術に関する研究費は、およそ18兆円という規模だが、その中の7割は、民間企業の研究開発部門によるものだ。新薬の発明が莫大な利益に繋がる医薬品メーカーでは、売上に対して10%以上の研究費を投じているが、他業界のメーカー企業では“売上のおよそ3%”というのが平均である。

研究費の内訳をみると、研究資材や設備にかかるのは全体の3割程度で、それよりも負担が大きいのは、研究者の人件費である。国の財政が厳しいことから公的な研究機関では、研究費が年々削られる方向へと向かって、研究者のリストラも始まっている。それを補って、日本の技術力を支えるのは、民間企業の研究部門にかかっているが、業績が伸び悩む中で、各メーカーでもすべて自前で人材を抱えることが難しくなっており、研究開発のスタイルを変えなくてはいけない時期に差し掛かっている。

《国内の科学技術研究費の推移》

  

《研究費の内訳》

  

研究者にとって、自分の開発する技術が、ライバルとの競争で1位か2位か、というのは非常に大切な問題で、1位であれば独占的な権利を取得して莫大な利益を得ることができるが、2位以下であれば、他社にライセンス料を払って、自社よりも優れた技術を購入しなくてはいけない立場になる。消費者であるユーザーは、常に「世界で一番」の性能を製品の中に求めているためだ。

その意味で、研究開発の仕事は想像以上に“肉食系”であり、サラリーマンとしての働き方がベストとは言えない面がある。数年前から、企業に勤める研究者が、自分の発明した技術に対する正当な報酬を、会社側に請求する訴訟が出始めているが、日本では、研究成果に対して研究者へのリターンが少なすぎるのが実態。一方、米国では優秀な研究者が、研究資金を自分で調達して独立する起業モデルが確立している。

資源が乏しい日本では、今後も技術力で他国よりも優位な立場を死守していかなくてはならないが、研究者を冷遇していたのでは、優秀な頭脳が次々と他国へ流失してしまう。そこで今回は、研究活動に打ち込みたい人達にとって、どんなビジネスの立ち上げ方が考えられるのかを掘り下げてみたい。

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この記事の核となる項目
 ●資金調達ノウハウが要となる研究活動
 ●国内における研究資金マネー(18兆円)の流れ
 ●斜陽化する大学教員としての研究スタイル
 ●世界に広がる研究者の買収とスパイ疑惑
 ●研究者の引き抜きで特許技術を得る新興国メーカー
 ●競争資金による研究者の起業モデル
 ●インセンティブを効かせた米国研究者の報酬体系
 ●知的財産が守られた競争的研究ビジネスの収益構造
 ●クラウドで広がる社会貢献型の研究ネットワーク
 ●オープンソースソフトが求められる理由と商用ソフトのリスク
 ●ITの巨人企業が狙う権利ビジネスモデルと特許オークション
 ●雇われない働き方へと移行する頭脳をウリにしたプロ人材
 ●サラリーマンの実戦経験を活かして大学教授へと転身する道
 ●みんなの共同作業で解明する市民科学とクラウド社会の輪郭
 ●回路図の開示による顧客サポートとオープンソース電気自動車


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JNEWS LETTER 2011.1.24
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