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1万円の海外旅行を実現させる
格安航空会社(LCC)の衝撃
written in 2010/9/16

 東京から上海までJALの往復航空券を、割引無しの正規運賃(エコノミー)で買うと、大人一名で23万円になる。まともに、この値段で買う人は少ないと思うが、割引された運賃でも6万円前後が相場。それが、中国の航空会社による格安チケットなら 900元(約1万円)で買える。座席の広さやサービスの質に違いがあると説明されても、同じ空路にそこまでの価格差があるのは、消費者として釈然としない。

日本の航空運賃は、正規料金に対して複雑な割引制度やマイレージ特典を加えることで“定価”の体裁を保とうとしているものの、世界の潮流からすれば、数千円の運賃で、飛行機を利用できる時代が到来しようとしている。

中国の春秋航空は、日本で98番目の空港として開業した茨城空港で就航する「「上海ー茨城間」の定期チャーター便で、片道4千円の席を設けることを発表して、日本の航空業界に衝撃を与えた。また、全日空も、香港の投資会社との提携により、ANAとは別ブランドで、従来よりも運賃を半額程度に抑えた、格安航空会社を設立すること決めた。これにより、東京−大阪間が片道5千円程度になるとみられている。

日本航空(JAL)のような大手航空会社が経営破綻する一方で、世界の航空業界にベンチャーとして参入してきているのが、ローコスト・キャリア(LCC)と総称される格安航空会社の存在で、従来の常識を度外視した低価格の運賃により、大手キャリアの顧客を奪っている。

どうして大手キャリアの割引運賃よりも、さらに半額以下の価格でチケットを販売できるのかといえば、中古の航空機を安く購入、使用料が安い空港に離発着、機内サービスは最小限に抑える、チケットの販売は代理店を介さずにネット直販に限定する、といった効率経営をしているためだ。その影響もあって、世界の航空運賃は2000年以降、大幅な下落が止まらない。

航空機は、適正な整備さえ行えば、寿命が無く飛び続けることができると言われている。実際には部品調達の問題があるものの、機体の製造から40年以上は現役機として使える。それでも次々と新たな航空機は発注されており、ボーイング社の市場予測によれば、世界にある民間ジェット機の数は(現在1万5千機)は、2022年までには2倍以上の3万4千機に増えると予測されている。

《民間ジェット機の推移》

  

こうした状況から、今後も航空業界は供給過多の状態が続くことで、航空運賃は更に下がり、近い将来には、バスや電車に乗るのと同じ感覚で、飛行機を利用できるようになることも現実味を帯びてきた。それによって、国境を越えた人やモノの移動がしやすくなり、ビジネスや消費者の生活にも様々な変化が生じてくることは必至だろう。その波に乗ってどんな新ビジネスが生み出せるのか、今回は格安航空会社(LCC)の仕組みを掘り下げなら、考えていくことにしよう。
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この記事の核となる項目
 ●格安航空会社(LCC)のビジネスモデル
 ●なぜ格安航空会社は登場してきたのか?
 ●軍用機の払い下げから始まった航空業界の歴史
 ●LCCが1千円以下で航空券を売るための仕組みと採算
 ●世界の経済を変える格安航空券の影響力
 ●航空貨物にも押し寄せる新ビジネスの波
 ●日本ブランドの生鮮野菜を中国に出荷する売る新ビジネス
 ●eコマースのグローバル化と個人輸入の未開拓市場
 ●米国から日本への国際送料を下げるノウハウ開発
 ●航空貨物を活用した高級ワインの輸入代行ビジネス
 ●黒船に乗った新興国の知的ワーカーが迫る労働市場
 ●日本からの中国ネットビジネス参入に向けた視点の磨き方
 ●出張族をターゲットとした旅行ビジネスの潜在市場と商機
 ●ネットによって国境を楽々と越えるサービス貿易の動向と影響


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JNEWS LETTER 2010.9.16
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