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  音楽業界ではCDが売れなくなったことで、コンサートへの集客に収益の軸足を移している。毎回のコンサートに訪れてくれるファンの客単価は、各種のグッズ購入などで高くなるのが特徴。そこで求められるのが、コンサートチケットを今よりも効率良く売るための仕組みである。
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電子チケットによる予約権の取引と
遊休資産のマネタイズ
written in 2010/6/4

 人気アーチストのライブチケットは、発売されるとすぐにネットオークションに出品されて、ステージに近い良席は、定価よりも2倍、3倍のプレミア価格に跳ね上がることが珍しくない。そこで、自分が行く予定の無いチケットを予約購入しては転売することで小遣い稼ぎをする人もいる。音楽不況と言われる中でも、人気ライブのチケット争奪戦だけは勢いが衰える様子はない。

それならばと、主催者自らがステージ最前列の席を高く設定したり、公式オークションを開催して配布価格を決めるケースも出始めている。音楽アーチストにとって、これまで主力の収益源となっていたCDの売上が急落していることから、「音楽をリアルな会場で聴いてもらうこと」のほうへ収益の軸足を動かそうとしているのだ。

いまではアーチストの楽曲がネットの各所にアップロードされており、音源の価値は次第に薄れている。たとえば、「Grooveshark(グルーブシャーク)」は音楽専用の検索エンジンで、自分がお気に入りのアーチスト名を入力すると、ネットで公開されている該当の音源を探し出して、プレイリストを作成することができ、曲を流し続けてくれる。

Grooveshark
  http://www.grooveshark.com

こうした時代に、CDが売れなくなるのは当然のことで、大手レコード会社も経営難の状況では、賢明なアーチスト達は既に「音源を売ること」をビジネスの柱とは捉えていない。それに代わって見直されているのが、「チケットを売る」ことを起点としたビジネスモデルだ。

これまで、コンサートチケットの販売は、地域のイベント会社がプロモーター(興行主)となって売り捌くのが通例であったが、これはアーチストが全国ツアーで各会場を満席にするのに、その地域で強い販売力を持つ業者との提携が必要であったことに起因する。地方の新聞社やテレビ局が、「○○プロモーション」といった子会社を設立している例が多いのも、自前の媒体でコンサートの宣伝を無料で行えるためである。

しかし今では、チケットもオンライン販売が主流となったため、地域プロモーターの助けを借りる必要性は薄れてきた。それよりも、新タイプのチケットを商品化することのほうが重要。そもそも「チケット(ticket)」とは“切符”のことで、昔はプレイガイドの窓口に並ばなくては買えなかったが、最近では電子的な取引が進んでいるため、アーチストの公式サイトから全国のファンに対して、数時間でチケットを売り切ることも可能になっている。こうしたチケット販売のノウハウは「チケッティング戦略」といって、今後はネットで音源を売ることよりも重視されるとみられている。

いま音楽業界に起こっている変革の波は、デジタル商材や電子メディアの登場で収益が落ち込み始めている他業界の“10年先”を行くものだが、彼らがどんなチケットビジネスを展開しはじめているか学ぶことで、デジタルに疲弊した業界の生き残り方を考えてみよう。
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この記事の核となる項目
 ●デジタル音源を撒き餌に成長する音楽ライブ市場
 ●ライブ会場を主力にした音楽業界の収益モデル
 ●「ぴあ」の衰退と、米国チケットビジネス最前線
 ●電子時代に衰退するチケット委託販売ビジネス
 ●米メジャーリーグのチケット直販システムに学ぶ
 ●チケット販売を起点とした音楽業界の再編
 ●ダフ屋のいないプレミアムチケット市場
 ●チケッティング戦略によるマネタイズの応用モデル
 ●大学フットボールに採用されるチケットの先物買いシステム
 ●メガヒットに頼れない音楽業界が生き残る二つの方向性


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