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預金通帳、各種の契約書、遺言書などは「紙」の書類であることが多いが、これらをバックアップ用にスキャニングして電子的に保管しておくことが、欧米の富裕層に流行している。そこに着目した電子貸金庫ビジネスを、銀行などが手掛け始めている。

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ストレージの付加価値を高めた
電子貸金庫ビジネスのモデル
written in 2010/2/3

 政治家が自宅に数億円の現金を保管しておくという話はあるにしても、これは表に出せないお金であり、一般の家庭なら仮に数千万円の預金がある世帯でも、手元で保管している現金は十数万円に過ぎない。それ以上のお金は銀行に預けておくというのが常識的で健全な考え方だろう。

昨今の金利水準から言えば、預金することで大した利息が付くわけではないが、“大切なお金が盗まれないように預かってもらう(保管してもらう)”という目的で銀行は利用されている。そのため、銀行内には必ず大きな金庫室があるが、実際の預金は、大半が融資や国債の購入などで運用されており、本当に預金者の全額が金庫で厳重に保管されているわけではない。それでも信頼できる金融機関にお金を預かってもらうことの安心感は大きい。

一方、自宅に空き巣が入ったとして、盗まれて一番困るのは何だろうか?預金通帳や印鑑は本人確認のチェックが厳しいため、すぐにそれで被害が生じることは少なくなっている。それよりも盗まれてダメージが大きいのは「パソコン」という人が多いのではないだろうか。

預金や株式などの大半を電子的に管理するようになった現代では、各種のIDやパスワードが記録されたパソコンは“資産”そのものであるし、仕事上の重要文書や顧客情報が記録されているようであれば、翌日からの業務に支障が生じるばかりか、情報流出の責任を社会的に負わなくてはならない。しかしその割に、パソコン上のデータを安全に保管するための対策は遅れているのが実態。

盗難ということだけでなく、電子的に記録されたデータが安全に保管できる年数というのは、じつは紙よりも短い。紙は多少劣化しても記録されている文書を読むことができるが、電子データは媒体が少しでも劣化すれば読み取りエラーとなって記録が消失してしまう。ハードディスクの寿命は5年前後、USBメモリーやSDカードなどのフラッシュメモリーは、それよりも短いと言われている。ディスクやメモリーカード、それにDVDメディアなどは、大切に金庫へ保管しておいても、腐食や錆びなどにより、数十年以上にわたる長期保存は難しいのだ。

そこで、大切な電子データを安全に保管するオンライン・ストレージサービスに対する需要は潜在的に大きいが、技術の進歩によって、同じ情報量に対する記録媒体の単価は急落しているため、リアルな倉庫業のように「坪単価×倉庫面積」のように安定した家賃収入を得ることは難しい。ハードディスク、1ギガバイトあたりの単価でみると、十年前よりも数百分の一にまで下落している。

《ハードディスク・1ギガバイト単価の推移(概算)》
    ・1995年………50,000円
    ・1998年………5,000円
    ・2001年………400円
    ・2004年………80円
    ・2007年………40円
    ・2010年………7円

    ※1ギガバイト単価=ハードディスク価格÷ディスク容量

ディスク単価が暴落しているとはいえ、情報(データ)そのものの価値が下落しているわけではなく、特に対外的には非公開となっている個人情報や、会社の機密情報については重要度が増しており、その保管方法には神経を尖らせなくてはいけない。そこからすれば、ディスク容量単位で課金するのではなくて、大切に保管しておきたい“データの種類”に応じた保管サービスは商機が見込めるはず。その具体的なビジネスモデルを考えていくことにしよう。
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この記事の核となる項目
 ●ギガバイト単価で決まるデータ保管サービスの採算
 ●クラウド時代にみるデータ保管業の裏側
 ●オンラインストレージの業界構造
 ●ワインのストレージにみる新たな倉庫業の形
 ●信用を付加価値とした電子貸金庫ビジネス
 ●銀行との提携によるオンラインストレージ事業
 ●健康医療データを共有するための保管サービス
 ●共有することが求められる健康医療データの動向
 ●EHRブロバイダーの仕組みについて
 ●医療訴訟と電子カルテ整備の関係
 ●Health2.0型サービスが狙う医療ビジネスの参入ポイント
 ●亡くなった後の遺志を残すオンライン遺言サービス


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JNEWS LETTER 2010.2.3
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