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グーグルの人材発掘法に学ぶ
奨学ビジネスへの関わり方
written in 2008/10/25

 現代では大学生が1年間の生活をするのに 約220万円のお金がかかる。これは学費と生活費を合算した年間支出の平均額だが、入学から卒業までなら約1千万円の資金が必要だ。一方、賃金相場の低迷により、親の収入は年々目減りしていくような状況の中で、家からの仕送りだけではやっていけない学生の数が増えている。そのため大学生の8割近くがアルバイトで生活費を補っているが、それでも足りない場合には、奨学金の給付を受けるという方法がある。平成8年には奨学金の受給率が全学生に対して21%だったものが、平成18年には41%にまで増えている。

昔の奨学金といえば、家庭の経済状況が苦しいながらも、成績が優秀な学生を支援するための“あしながおじさん”的な性質が強かったが、現在の公的な奨学金制度は、申し込めば大半の学生が利用できるシステムへと変わっている。ただし、大学を卒業した後には“利子”を付けて返済しなくてはいけないというビジネスライクなものになっている。

少子化によって、昔ほど大学受験が難関ではなくなり、大学への進学率は50%を超えるまでになった。そのため現代では、大学へ進学するか否かの境界線は、頭の良し悪しよりも、経済的な事情によることのほうが大きいのだ。学生生活調査によると、子供を大学に通わせている家庭の平均年収は、平成19年のデータで約850万円という水準。これは40歳代の平均世帯年収(約700万円)よりも1ランク上の家庭層になる。格差社会における家計の支出では、子供の教育費にどれだけのお金をかけられるのかが、最も差が生じている部分で、年収が 400万円未満の家庭では、子供を大学へ進学させる経済的な余裕がないのが実態である。

一方、家庭に恵まれて、大学を卒業した若者は、皆が優秀なのかといえば疑問符が付く。大学は自身の経営を優先して、教育の水準を下げはじめたことで、実力が伴わない“名ばかり大卒者”が増えて、企業の採用担当者は頭を抱えているといった状況だ。もちろん、すべての学生の出来が悪いというわけではないが、従来と同じ採用方法を続けていたのでは、優秀な人材を他社に取られてしまう。その中でも、特別な才能や高いIQを持つ若者は、企業にとって喉から手が出るほど欲しい存在だが、彼らを獲得するためには、高校生や小中生のうちからツバを付けておく必要があるだろう。

そこで考えられるのが、企業が独自の奨学プログラムを運営することである。リクルート雑誌の求人広告に多額の費用を使うのであれば、その資金を“奨学金”として利用したほうが効果的だという考え方もある。それを既に実践して、優秀な学生の獲得に成功しているのがグーグルやインテルなどだ。

ネットで「奨学金」に関する情報を検索すると、様々な奨学金制度が一覧されるが、その中では、利子付きで返済しなくてはいけないローン型のものや、“奨学金”という名称を使い、巧みに学生を顧客に取り込もうとする営利目的のものが非常に多い。しかし本来の奨学制度は、才能や夢のある若者を支援するためのものでなくてはならないはずだ。

それでは資金の提供者が直接的なメリットを得られないという意見もあるが、そこはアイデアと企画次第で、様々な奨学プログラムを成功させることができる。新卒者向けのリクルート市場では、資金の大半が求人広告費に流れているが、その一部が奨学プログラムに使えるようになれば、優秀者だけに絞り込んだ人材発掘事業が成り立つはずである。
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この記事の核となる項目
 ●教育の格差社会で学生ローン化する奨学金の実態と問題点
 ●学生ローン化する公的奨学金の仕組みと返済状況
 ●欧米の名門大学にみる本物の奨学制度と同窓会組織の価値
 ●一流大学における奨学制度と資金の循環システム
 ●企業が運営する奨学制度の目的と仕組み
 ●奨学金ポータルサイトのビジネスモデル
 ●奨学制度によるグーグルの人材発掘法
 ●求人広告でなく奨学コンテストによる人材の発掘
 ●企業が見習うべき劇団オーディションによる求人システム
 ●子供への投資として考える高級教育ビジネスの特徴と成長分野
 ●社会人と企業を顧客として取り込み始める大学ビジネスの行方


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JNEWS LETTER 2008.10.25
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