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花柳界の徒弟制度に学ぶ 人材育成システムと独立支援の方法 |
written in 2008/1/28
京都の祇園には「女紅場学園」という学校がある。これは祇園で働く芸者が舞踊、長唄、三味線などの芸を学ぶための教育施設で、芸事の仕事に特化した職業訓練校の役割を果たしている。“女紅場(にょこうば)”というのは、明治の頃、女子に裁縫や読み書きを教えるために設立された教育施設のことを指していて、当時は八坂女紅場と呼ばれていた。この学校が普通の職業訓練校と違うのは“卒業”という制度が存在しておらず、生徒の年齢層は10代から80代までが何十年間と通い続けている。祇園の芸者として生きている間は一生通い続けて自分の芸を磨き続けるのである。そのようにして伝統的な文化は守られているのだ。
祇園だけに限らず、芸事や職人の世界では“一生学び続けること”が基本になっている業界が少なくない。音楽業界でもクラシックやジャズの世界では、一流の奏者となるためには、一流の先生(師匠)に弟子入りをして、師匠から演奏技術を学ぶ。師弟関係が尊いのは、若い弟子がやがて独り立ちをして業界で大成功をしたとしても、「師匠と弟子」の関係が逆転することはないということだろう。
一方、サラリーマンの世界ではどうだろうか?「上司と部下」がそれに似ていると言えなくもないが、辞令一枚でその関係はコロコロと変わる。昨日まで課長だった人が、成績不振を理由に降格されてしまうと、社内での呼び名や、若手社員の接する態度までが変わってしまったという話はよく聞く。さらに実力主義の会社になると、年齢の若い社員が上司となって年長者の部下に檄を飛ばしている光景も珍しくないが、それでは社内で師弟の人間関係を築くことは難しい。
このように現代の職場では「教える・学ぶ」ということに対する教育システムが崩れかけている。会社ではそれを補うために様々な社内研修のプログラムを用意しているが、それだけでプロとしての技量を身につけたという社員はほとんどいないだろう。社内でわからないことが生じれば、上司や先輩に聞くよりもネットで検索したほうが手っ取り早いし、どうせ勉強をするのなら、退職しても通用する公的資格を取得したほうが役立つという価値観が広がっている。
もちろんこれは会社にとって大きな損失である。経営者は毎月高い人件費を払い続けても人事が育ちにくいばかりか、優秀な社員ほど社内で習得した知識やノウハウを持って独立してしまうというのであれば、人材に対する投資は“失敗”と言わざるを得ない。これを回避するにはどんな人材育成の仕組みを考案すればよいのだろうか?そのヒントは古い徒弟制度の中から学び取ることができる。
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JNEWS LETTER 2008.01.28
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