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現代版“街の電器屋さん”として広がる 家電インストール業 |
written in 2006/5/2
かつてテレビ・洗濯機・冷蔵庫が“三種の神器”と呼ばれた時代には、電器店を開業することが花形の起業テーマであった。当時の家電製品は消費者にとって自動車に次ぐ憧れの存在で、“街の電器屋さん”には新製品への期待に胸を躍らせた消費者が支給されたばかりのボーナスを握りしめて訪れていたものだ。各地域にあったこれらの電器店と家電メーカーとの関係は、現在のフランチャイズ制度の原型といえるもので、松下や東芝、日立、ソニーなどの大手メーカーでは、自社の製品を専門に扱ってくれる地域の電器店を“特約店”や“取次店”という位置付けで強力にサポートしてきた経緯がある。
そのためナショナルのカラーテレビが欲しいと思う消費者は、最寄りの松下電器特約店(ナショナルショップ)で購入するという流れが出来上がっていた。松下電器だけでも全国に築いた特約店の数は約2万店と、非常に細かな販売網が築かれていて、各特約店に対しては新製品に関する詳しい修理技術の指導も行われていた。そのため当時の電器店経営者は、各メーカーが敷いたレールの上に乗ることで手堅い商売をすることができた。
ところが時代は進み、価格の安さをウリにしたディスカウントショップや大手量販店の台頭によって、各メーカーは従来の特約店よりも量販ルートへの拡販に重きを置くようになった。それに伴い、個人経営の電器店の多くが販売不振となって廃業へと追いやられていったが、消費者からは、量販店やネット通販には頼めない面倒な要望にも応じてくれる地域の電器店への根強い人気がまだ残っている。消費者が小回りの効く電器店に望んでいるのは、商品をディスカウントして販売することよりも、“腕の良い技術”を提供することだ。
パソコンに限らず家電製品もIT化の波を受けて、取り付けや修理の方法が複雑になっていることから、そこを丁寧にサポートしてくれる業者との付き合いは大切にしたいと考えている。そこに着目すれば、以前とは姿形を変えた現代版の“街の電器屋さん”を起業テーマとすることも可能だ。
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JNEWS LETTER 2006.5.2
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