巨大ホテルチェーンと新ブランドホテルのビジネスモデル
世界のホテル業界は、1990年代から合併統合によるチェーン化が進められてきた。米国のホテル企業「マリオット」は、リッツカールトンやスターウッドなど同業のホテルチェーンを次々と買収する形で、傘下のホテル数は世界で5500件、客室数が110万室の世界最大ホテルチェーンとなっている。
こうしたホテルチェーンの巨大化が進んだ背景には、インターネット予約やポイント制度の導入により、中小のホテルが単独で集客をするよりも、チェーン全体として共通化したほうが効率的・好採算になることがある。旅行者にとっても、世界の系列ホテルで同じメンバーズカードやポイントが使えるのは便利だ。
しかし、その弊害として、どこのホテルでも似たような部屋の仕様やサービス内容になってしまい、宿泊した時の感動が次第に薄れているのも事実だ。そこで大手のホテルチェーンとは対局に、運営会社のコダワリで超パーソナライズされたサービスや雰囲気を提供するホテルが、旅行者から支持されるようになっている。これらは「ブティックホテル」と呼ばれている。
ブティックホテルの運営は、ホテルの建設~物件管理を行う不動産開発会社と、ホテル内のプロデュースや接客サービスを担当するブランド企業との共同ビジネスとして行われるのが一般的である。「アルマーニホテル・ドバイ」の場合には、アパレル有名ブランドの「アルマーニ」がホテル全体のプロデュースを手掛け、アラブの政府系不動産開発会社「Emaar Properties(エマール・プロパティーズ)」がビジネスパートナーとなっている。
日本の「無印良品」ブランドを展開する良品計画も、2017年7月、中国の深セン市に「MUJI HOTEL SHENZHEN(ムジホテルシンセン)」というホテルを、「深業上城(UpperHills)」という総合商業施設内に開業している。ホテルを運営するのは、深業上城の開発元となっている深セン深業酒店管理有限公司で、無印良品はホテル全体のプロデュースと、客室内のデザインを担当している。内装には、古い家屋の柱材や壁材を利用した木のぬくもりを感じられる空間を作り、無印良品の家具や雑貨が備品として多数置かれており、宿泊客が使用感を確かめられるショールームとしての役割も兼ねている。
このホテルは、外部の宿泊予約サイトは使わずに、自社の公式サイトのみで予約を受け付けている。宿泊料金は最も安いAタイプの部屋が(26平米:ダブル)が950元~(約15,000円)、最も高いEタイプの部屋(51平米:ダブル)が2,500元(約40,000円)となっている。宿泊客の中心は、中国の富裕層である。
良品計画では、中国を日本に次ぐ有望市場として200店舗以上を展開しているが、ホテル事業への新規参入は、中国内で無印良品のブランド価値を高める効果が期待できる。
■MUJI HOTEL SHENZHEN公式サイト(日本語)
■ホテルの紹介映像
このような有名ブランドを冠にしたホテルビジネスは、ブランド企業がブランド名のみを付与するケースや、ホテル内装のプロデュースまでを行うケース、実際の接客までを担当しているケースがあるが、失敗した時のリスクが最小限に抑えられるような事業計画が立てられている。一方、提携先の不動産開発会社では、既に知名度の高いブランドをホテル名とすることで、そのブランドに関心のある、または固定客として定着している消費者を、宿泊客として取り込むことができる。
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■JNEWS会員レポートの主な項目
・ブランドホテルのビジネスモデル
・中国富裕層を狙うアルマーニホテルの集客モデル
・ホテル長期滞在者向け予約プラットフォームの開発
・米国で人気化するコリビング住宅とホテル事業の接点
・ビジネスコミュニティを形成するコワーキング・ホテル
・民泊新法で見直される社員寮の役割と転用ビジネス
・法人遊休不動産の民泊転用ビジネス
・民泊運営代行サービスの役割と採算
・職住近接で求められる単身者向けマイクロアパートメント開発
・空き家メンテナンスに適したオンデマンドワークの仲介ビジネス
・賃貸物件の管理コストを軽減させるIoTシステムへの潜在需要
・米国で急増するコワーキングオフィスの開業ノウハウと採算性
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2018.9.7
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