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ポータルサイトが狙う クラウドビジネスの収益モデルと顧客層 |
written in 2009/1/11
いまやグーグルやヤフーなどが無料で提供している各種サービスを使うだけで快適なインターネットライフを送ることができる。わざわざソフトウエアを購入して自分のパソコンにインストールしなくても、電子メール、チャット、スケジュール管理、写真アルバムなど、個人ユーザーが必要だと感じている機能の大半は事足りてしまうだろう。
消費者にとっては便利な時代が来たものだが、その反面、存続の危機に陥っているのが各種のパッケージソフトを開発、販売してきたソフトウエア・メーカーである。パソコン量販店の陳列棚をみてもわかるように、ソフトウエア製品の販売スペースは縮小の一途を辿っている。特殊なものを除いた“定番のソフト”といえるものについてはタダが常識となりつつあり、そこを主力商品としてきたソフトウエア会社の中では、売上が低迷して倒産する前に自主廃業をしたほうが賢いと考える経営者もいる。
ソフトウエアが他の商品と異なるのは、一度作った製品は劣化することがなく複製することも容易な点だろう。そのため優れたソフトウエアが一つあれば、それを世界中の人が共有することも可能である。するとユーザー1人あたりに換算したソフトの単価は非常に小さなものになり、開発費用を広告収入で賄うことができれば、ユーザーには無料で公開するというサービスモデルも成り立つようになる。
このような動きは個人向けソフトばかりでなく、業務用ソフトの分野にも波及している。たとえばeコマース用の商品管理データベースをA社、B社、C社が別々に開発するよりも、3社が共有することを前提にすれば、1社あたりの開発費は三分の一で済む。さらに共有するパートナーが5社、10社と増えていけば、さらに負担は小さくなる。
また、アマゾンのような大手eコマースサイトでは、巨費をかけて開発したシステムを自社だけで利用するのではなくて、他のeコマースサイトにも貸し出すことでもビジネスが成り立つ。これには二つの利点があって、一つはシステムのレンタル収入を得られることで、もう一つは同業者(中小のeコマースサイト)を自社の傘下に収めることができるという点だ。
このような発想によるIT業界の系列化は「クラウドビジネス」と呼ばれている。注目キーワードとして「Web2.0」が数年前から聞かれるようになったが、クラウドビジネスもその流れの延長として捉えることができる。これは、インターネットで繋がっている巨大なサーバー群を大きな“クラウド=雲”に見立てて、遠隔から同じ機能を共有したり、レンタルするイメージを表している。個人ユーザーは無意識のうちに、グーグルやヤフーといった大きな雲にぶら下がることで便利で豊富なサービスを利用しており、いまさら「そんな大手サイトの世話にはなりたくない」と固辞する人は少ないだろう。
インターネット黎明期からサーバー機能の共有やレンタルができる仕組みは色々と登場しているため、“クラウド”といっても特別に新しいものではないが、その言葉からは、新たな業界再編の動きを読みとることができる。新興のネットベンチャー達は、次々と追加されるポータルサイトの新サービスに対抗するのではなくて、彼らが張り巡らしている雲の下で、上手に立ち回ることに成功の鍵が隠れている。その雲がどんな方法で広がり、どんなビジネスが展開されていくのかを見ていくことにしよう。
(ビジネスモデル事例集一覧へ)
●クラウドコンピューティングの意味するものとは
●ポータルサイトが狙うクラウドビジネスの収益モデルと顧客層
●クラウド企業が提供するオンライン機能と収益構造
●法人ビジネスへと向かうグーグルのクラウドビジネス
●Google Appsによるソフトウエアの利用形態
●本業の余剰分を貸し出すアマゾンのクラウド戦略
●仮想サーバーによるクラウドビジネスの展開モデル
●世界が一つに集約されたクラウド時代に生き残る賢者の発想法
●世界中のネットユーザーを取り込むクラウドOSの動き
●クラウドビジネスのニッチ市場は成り立つか?
●アマゾンはなぜ買収されないのか?eコマース業界の光と影
●Web2.0時代にポータルサイトが目指すシンジケートビジネス
JNEWS LETTER 2009.1.11
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