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新規独立者における 起業スタイルの動向とネット活用策
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written in 2001.9.12
景気低迷、株価の下落、大企業の大量リストラなどビジネスマンを取り巻く環境は厳しい。特にサラリーマンにとっては、終身雇用制が崩れていくことから、今後の人生設計も大きく変化していきそうだ。
自動車メーカーの「マツダ」では、2001年2月に「早期退職優遇特別プラン」として1800人の募集枠で退職希望者を募ったところ、募集開始からわずか60秒で2200名の応募があったという。このような例はマツダに限った話ではなく、「第二の人生」を考えている従業員達はどこの企業でも予想以上に多い。
特筆すべき傾向としては「自分の実力に自信のある者ほど独立意欲が高い」という点だ。自分の才能や能力を社内だけでとどめてしまうよりは、新しい環境や、自らが起業して試してみうようとする気持ちが強い。
ただし、実際の“起業”となると、そう簡単には成功できないのも厳しい現実の姿である。独立起業については、専門分野における自分の能力やスキルと、気力、体力が充実していることが大切で、さらに大胆な行動力と緻密さとの双方を兼ね備えていないと成功することが難しいと言われる。
しかし、時代としては“独立起業”を支持する流れにある。ひと昔前の起業といえば、フランチャイズチェーンに加盟して店舗経営をするため、数千万単位の借金を背負ってのスタートが多かったが、最近ではその形態も変わり、インターネットを活用したスタイルが主体をしめるようになった。
新しい独立起業スタイルの傾向
近年の新規独立開業者がどんな傾向にあるのかを把握する資料としては、国民生活金融公庫が2000年末に発表した「2000年度新規開業実態調査」が参考になる。同調査は国民生活金融公庫の各支店で新規事業資金融資を受けた開業後1年以内の事業者(2148社)からのアンケート回答を集計したものだが、その内容をもとにして、最近の独立起業スタイルの動向を確認しててみよう。
<●新規開業の平均年齢>
・1991年度調査………平均38.9歳
・1998年度調査………平均40.2歳
・1999年度調査………平均40.9歳
・2000年度調査………平均41.6歳
※新規開業年齢が上昇傾向にあるのはリストラなど高年齢層の離職率が
高まっていることが影響している
<●新規開業費用の分布>
・500万円未満 …………………24.4%
・500〜1,000万円未満…………29.3%
・1,000〜1,500万円未満………15.5%
・1,500〜2,000万円未満……… 9.7%
○不動産を購入した場合の開業費用平均値…………3,579万円
○不動産を購入しない場合の開業費用平均値………1,235万円
○全体の開業費用平均値………………………………1,537万円
<●開業資金に占める自己資金の割合>
・ 0〜10%未満…………………22.4%
・10〜20%未満…………………15.7%
・20〜30%未満…………………20.6%
・30〜40%未満…………………11.2%
・40〜50%未満………………… 9.6%
・50%以上………………………20.6%
○不動産を購入した場合の自己資金平均値…………842万円
○不動産を購入しない場合の自己資金平均値………369万円
○全体の自己資金平均値………………………………428万円
※自己資金で補えない部分の開業費用については親・兄弟(36.1%)または
金融機関(38%)からの融資などによって調達されている。
<●開業時の企業形態>
・個人事業として……………71.2%
・法人企業として……………28.8%
<●開業時の従業員数>
・本人のみ……………………22.8%
・2人…………………………24.7%
・3人…………………………15.5%
・4人…………………………10.6%
・5〜9人……………………19.4%
・10人以上…………………… 6.9%
※出所:2000年度新規開業実態調査(国民生活金融公庫)
開業資金とインターネット活用との関係
新規開業にかかる資金の状況を見てみると、不動産購入や事務所設置にかかる費用が大きなウエイトを占めていることがわかる。不動産購入を必要とする実店舗型の開業では平均 1,500万円以上の資金が必要となるが、これだけの資金をかけたからといって成功確率が必ずしも高まるとは言い難い。逆に、開業資金にかかる負担が少なくなるような工夫をすることが、これからの起業には大切だ。
前出の新規開業実態調査の中では、新規開業者のインターネット活用状況にも触れている。それによれば、インターネットによる情報収集や電子メールを事業の中で活用している割合は全体の約44.8%、自社のwebサイトを開設しているのは18.1%という結果だ。
新規開業者の4割以上がインターネットを活用しているというデータは、高い水準のように捉えられがちだが、5割以上の新規開業者が電子メールすら使っていないという現状は、挑戦者としてはあまりに努力不足だという見方もできる。
また、自社のwebサイトが企業にとっては“店舗”であり“営業ツール”として大きく貢献するにも関わらず、8割以上の新規開業者が自社サイトを持っていない。1,000万円以上の開業資金を用意しながらも、優れた営業ツールを活用しないというのは、大きな成功へのチャンスを逃しているといっても過言ではない。
つまり新規開業者の大半は、開業資金を効果的に活用することができていない。「インターネットの活用」だけがすべてではないが、従来型の販売手法をオンライン型に転換したり、電子メールによる顧客開拓を展開するだけでも、かかる開業資金を大幅に削減することは十分に可能なのだ。
特に、歳をとってからの起業は、店舗や事務所などの体裁にこだわって無駄な資金をかけることも多いが、これで成功確率が高まるわけではない。顧客と直接対面しない形のビジネスであれば、4畳半一間の事務所とインターネット環境だけでも事業を興すことはできる。派手な見栄をはるのではなく“工夫と努力”によって開業資金の無駄を抑えることこそが、高収益体質の会社を作るための第一歩目となるのだろう。
■JNEWS LETTER関連情報
JNEWS LETTER 99.7.19
<実店舗型ビジネスにおける開業資金の考え方>
https://www.jnews.com/mem/back/1999/199907/j990719.html
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これは正式会員向けJNEWS LETTER 2001年9月12日号に掲載された記事のサンプルです。 JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料(個人:月額500円、法人:月額1名300円)による情報提供をメインの活動としています。JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。
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