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社員を“やる気”にさせる
マトリックス型組織の仕組みと特徴
written in 2000.11.12

 業績を著しく伸ばしている企業では独自の組織形態を構築しているケースが多い。古くからのピラミッド形組織では、各社員の能力が上手に活かせなかったり的確な評価ができないという問題点をはらんでいる。経営者が一部の幹部社員に対して指揮命令したことが、下位の社員へと伝達されていくピラミッド型組織は、大量生産・大量消費の時代には上手に機能していたが、多品種少量生産・消費型の時代にはマッチしにくい。いち早くここに気付いた先進的企業では、マトリックス型の組織構造を形成することにより意思決定の速度を高めると同時に、各社員のモチベーションを高めることにも成功している。


ピラミッド型組織の問題点

 全国に支店(営業所)を配置する企業のケースで、ピラミッド型組織形態の問題点を考えてみよう。

               [本 社]
                 │
       ┌─────────┼──────────┐
       ↓         ↓          ↓
    [横浜支店]    [名古屋支店]     [大阪支店]
       │         │          │ 
     [支店長]     [支店長]      [支店長]
       │         │          │ 
     ┌─┴─┐     ┌─┴─┐      ┌─┴─┐
     │   │     │   │      │   │
   [課長] [課長] [課長] [課長]  [課長] [課長]
   ┌┬┼┐ ┌┼┬┐ ┌┬┼┐ ┌┼┬┐  ┌┬┼┐ ┌┼┬┐
   ○○○○ ○○○○ ○○○○ ○○○○  ○○○○ ○○○○ 

    ※○=一般社員

本社から各支店に対する営業戦略はすべて(支店長→課長→一般社員)というルートで伝達されるため、実際の担当者となる一般社員に伝達されるまでに時間がかかるのと同時に、正確に戦略の内容や意図が伝わらない可能性が高い。さらに担当者が現場の状況を見て、営業方法を臨機応変に修正・変更したい場合には今までと逆の経路(一般社員→課長→支店長→本社)で許可を得なければならない。これでは市場の環境変化が激しい業界では、満足な営業活動をするこは事実上不可能だ。

また、人事評価の面でも問題がある。現場担当者(一般社員)の努力によって該当部署の業績が向上したとしても、その手柄は“課長”または“支店長”のものとして本社に伝えられるために、本社側では「真の貢献者」である現場担当者を適切に評価できない。そのため一般社員の仕事に対するモチベーションは一向に高まらず、「優秀な社員ほど辞めていく」という皮肉な現象が、実際に大企業を中心に起こり始めている。


マトリックス組織による改革

 このようなピラミッド型組織による歪み(ひずみ)が生じた場合には、社内の組織形態を改革する必要がある。そこで最近注目されはじめているのがマトリックス型の組織である。図式化すると下記のようになる。

     │ 横浜支店   │ 名古屋支店  │ 大阪支店
  ───┼────────┼────────┼───────
  製品A│ 責任者:佐藤 │ 責任者:鈴木 │ 責任者:山内
  ───┼────────┼────────┼───────
  製品B│ 責任者:井上 │ 責任者:渡辺 │ 責任者:杉山
  ───┼────────┼────────┼───────
  製品C│ 責任者:山田 │ 責任者:松下 │ 責任者:田中
  ───┼────────┼────────┼───────
  製品D│ 責任者:伊藤 │ 責任者:高橋 │ 責任者:小川

ピラミッド型組織では各支店長が全製品の地域責任者(権限者)であるのに対し、マトリックス型では各製品毎に地域責任者として一般社員を起用して指揮をとらせる。例えば、名古屋地区、製品Aの販売に関しては一般社員の鈴木氏が販促マーケティングの企画〜販売員の配置までのリーダーシップをとる。同じように製品Bについてのリーダーは渡辺氏、製品Cは松下氏、と支店内の全社員がリーダーとなると同時にスタッフでもあるわけだ。同時に、課長、支店長の役割と権限は消滅の方向へと向かう。

 この組織形態によって、各社員は自分に任せられた製品に関する営業戦略を自由に練ることができ、実力と努力次第では年齢や役職に関係なく高い成果を上げられるようになる。本社側においても、今まで役職者の影に隠れていた若い一般社員の実力を明確に把握できるようになり、優秀な社員については更に重要な権限を与えることによって効果的な人材登用が実現する。

 今までにもマトリックス型組織の効能に気付いていた経営者は多いが、それを実行するための仕組み作りに難航していた。しかし、インターネットの普及と情報技術の進歩によって比較的安価なコストでグループウエアが導入できるようになった。

 ただし、マトリックス型組織は組織が小さければ小さいほど有効に機能する。社員が何万人もいる大企業ではグループウエアを導入したところで、簡単にフラットな組織形態になるとは言い難い。一方、十数名程度の小さな組織ならば、全スタッフにリーダーシップをとらせることにも難はない。この差が今後の命運を左右するため、大組織はやがて分社化への道をたどることになりそうだ。

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これは正式会員向けJNEWS LETTER 2000年11月12日号に掲載された記事のサンプルです。 JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料(個人:月額500円、法人:月額1名300円)による情報提供をメインの活動としています。JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。
 
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