|
地域内潜在購買力から導く
売上目標値と求められる情報
|
written in 1999.10.28
大手チェーンストアーが新規出店(実店舗)を検討する場合には必ず商圏分析をおこなう。その分析値が他の同系列店と比較して有望なのか否かによって最終的な出店地を決定することは既に常套手段である。また経営コンサルタント会社が売上不振店のサポートををする際にも、商圏の実情から商品カテゴリー毎に地域内潜在購買力を算出して、その数値と実際の売上高との間でどれだけの乖離があるのかを明確にして改善策を導き出していく。
この商圏分析手法はプログラミングされてパソコン画面上の地図をクリックするだけで分析結果が表示されるレベルにまで到達しているが、個人や中小企業の新規事業立ち上げ時に同様のシステムを導入することはコスト面からも難しい。しかし、地域内潜在購買力を算出する仕組みさえ理解しておけば、アナログ的に自店エリアの売上目標値を求めることも可能だ。
個人消費動向の調べ方
特定地域における消費者の潜在的な購買力を求めるためには、各項目毎に分類された個人消費指標から一世帯あたりの消費傾向を調べ上げ、それに地域世帯数を乗じることで目安となる数値を算出する方法がわかりやすい。具体的な個人消費指標としては各省庁から公開されている統計資料がたくさんあるが、その中でも総務庁統計局が発表している「家計調査」のデータがよく利用されている。
■家計調査(総務庁統計局)
<1世帯あたり1ヶ月間の食料支出(平成11年8月分)>
●月間消費支出合計金額 ------------> 324,569円
◎月間食料費合計金額 --------------> 78,622円
・穀類 ----------------------> 7,158円 (米、パン、めん類等)
・魚介類 --------------------> 8,233円
・肉類 ----------------------> 6,707円
・乳卵類 --------------------> 3,962円
・野菜、海藻 ----------------> 9,489円
・果物 ----------------------> 3,773円
・油脂、調味料 --------------> 3,058円
・菓子類 --------------------> 5,029円
・調理食品 ------------------> 8,259円
・飲料 ----------------------> 4,286円
・酒類 ----------------------> 3,812円
・外食 ----------------------> 14,856円
○平均世帯人員: 3.30人
○世帯主の平均年齢:52.2歳
※家計調査(平成11年8月分)より
地域内潜在購買力の求め方
統計資料により詳細消費項目別の指標となる1世帯あたりの金額が調べられるために、その金額にターゲットとする地域世帯数を乗じれば大まかな地域内の購買力を求めることができる。これを市場調査業界では「地域内購買力」と呼んでいる。
1世帯あたり統計指標 地域内購買力A 地域内購買力B
───────────────────────────────
○食料費 78,622円 78,622,000円 59,562,121円
○光熱・水道費 19,581円 19,581,000円 14,834,090円
○家具・家事用品 12,653円 12,653,000円 9,585,606円
○被服・履物 13,220円 13,220,000円 10,015,151円
○保健・医療費 11,382円 11,382,000円 8,622,727円
○交通・通信費 36,994円 36,994,000円 28,025,757円
○教育費 8,823円 8,823,000円 6,684,090円
○教養娯楽費 37,990円 37,990,000円 28,780,303円
※全国平均世帯人数=3.30人
※ターゲット地域の平均世帯人数=2.5人
※ターゲット地域の世帯数=1000世帯
◎地域内購買力=1世帯あたり統計指標×ターゲット地域の世帯数
地域内購買力×地域内の平均世帯人数
◎地域内購買力B= ──────────────────
統計指標の全国平均世帯人数
上記事例の食料費について考えてみると、統計資料から調べた1世帯あたりの全国平均月間支出は78,622円、この金額に地域世帯数である1000世帯を乗じたものが地域内購買力Aが78,622,000円となる。ただし統計資料にある全国平均世帯人数は3.30人、ターゲット地域の平均世帯人数は
2.5人というように1世帯あたりの家族構成の違いによって誤差があるために、これを修正したのが地域内購買力B(59,562,121円)である。
地域内潜在購買力による目標値の設定
地域商圏内の潜在購買力が算出できれば、その数値から自店の目標売上高や現在の売上シェア率を把握することが可能となる。目標売上高の設定は、地域内の該当売場総面積に対する自店の販売面積の比率に地域内潜在購買力を乗じることで妥当な水準がわかる。
┌────────────────────────────────┐
│ 自店の販売面積 │
│◎自店の目標売上高=地域内潜在購買力×─────────────│
│ 地域内の該当売場総面積 │
└────────────────────────────────┘
地域商圏内における現在の売上シェア率を確認する場合には下記の公式により「地域内購買力」と「自店の売上高」との比率を計算する。各商品カテゴリー毎に販売シェア率を算出してみることによって、自店で販売してる商品の中で何が商圏内で強くて何が弱いのかを数値で判断することが可能だ。
┌────────────────────────────────┐
│ 自店の売上高 │
│ ◎自店の販売シェア(%)=────────────×100 │
│ 地域内購買力 │
└────────────────────────────────┘
市場調査に重要な統計指標の役割
この様な方法によって新しい市場の売上予測を立てるのが商圏分析だが、ここで最も重要な点が「統計データの信頼性」である。予測計算式はすべて統計データの詳細指標を起点としているために、統計データ自体に誤差がある場合には最終的な予測結果も当然ながら誤差が生じる。しかし公的機関が発表している統計データの中には、調査のサンプルデータ数が少なかったり調査日時が古かったりと、意外と信頼性に欠けるものの少なくない。どの資料を活用するのかは調査分析者の手腕の見せどころであるし、この種のマーケティングデータとして有効な資料は企業側が有償でも必要としている情報であることを覚えておきたい。
<公的機関が発表している統計資料の一例>
●家計調査報告(総務庁)
●単身世帯収支調査(総務庁)
●全国消費実態調査(総務庁)
●単身世帯消費動向調査(経済企画庁)
●消費動向調査(経済企画庁)
●国民生活基礎調査(厚生省)
●商業統計調査(総務庁)
●事業所統計調査報告(総務庁)
■JNEWS LETTER関連情報
JNEWS LETTER 99.9.5
<オンラインショップ経営におけるシェア率と商圏の考え方>
※アクセスには正式会員登録(有料)後のID、PASSWORDが必要です。
|
これは正式会員向けJNEWS LETTER 1999年10月28日号に掲載された記事のサンプルです。 JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料(個人:月額500円、法人:月額1名300円)による情報提供をメインの活動としています。JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。
|
|
|