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起業家になるためのノウハウ集
Written in 1998.8.6
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年収数千万円という高額所得を目指して起業する人は多い。自宅をベースにしたSOHO起業家でも大手企業から月額百万円規模の大きな請負契約を獲得して年商1千万円以上稼ぐ人も全国にはたくさん存在しているから、努力するための目標値として高額所得を設定することは良いことである。
さて努力の成果があらわれ事業が軌道に乗り始めた段階で経営者が悩むのが自分自身への報酬、つまり「社長の給料」である。自分が作った会社組織の中で社長は自分の給料を自由に決めることができるが、会社から給料を支給される立場にあることは他の従業員と何ら変わりがない。
社長にとって重要なのは、支払うべき税金のバランスを考えながら自分にとって妥当な給料を確保しながら会社を成長軌道へと導くためのノウハウである。しかし現実の中小企業経営者は自分自身への報酬の決め方に悩んでいたり間違った考え方をしているケースが目立つ。そこで最善の選択をするためのポイントを整理してみよう。
税制上の有利・不利
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会社が稼ぎ出した利益全額を会社の黒字額として計上してしまう方法と、利益全額を社長の給料として支払ってしまう方法で考えてみると税金として支払う金額の差が明確に理解できる。
<●利益が1000万円の場合>
※総売上から仕入原価、家賃、従業員への人件費等の経費を差し引いた社長への報酬を支払う前の利益が1000万円の場合。
[全額を会社の利益として計上する場合]
★支払い税額=1000万円×46.36%=463万円
(会社に対する法人税、住民税、事業税の合計税率が46.36%かかる)
[全額を社長の給料として支払う場合]
・課税対象金額=1000万−給与所得控除220万円=780万円
・所得税 780万円×20%−33万円=123万円
・住民税 780万円×15%−45万円=72万円
★支払い税額=123万+72万=195万円
つまり同じ1000万円の利益でも、社長の給料として利益分を処理したほうが268万円(463万円−195万円)の節税をすることができる。会社の利益額が5000万円程度までなら社長の給料として全額支払う方が税務処理上のメリットはあるのだ。
(ただしあまり過大な報酬を社長に支給した場合には税務調査で問題となる。)
経営上からの視点
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上記のように税法上は会社利益を社長報酬にまわした方が有利なため、そうしている同族会社も多いが、将来的に会社を大きくすることを前提にすれば、設備投資や従業員の増員をする際の資金繰りも考えておかなければならない。また小売業の場合なら仕入と売上の入金サイトの差や在庫の存在のため黒字であっても数ヶ月分の運転資金が必要となるため会社名義の預金も必要だ。。
資金調達を借り入れに頼ろうとしても決算数字で黒字が計上されていなければ金融機関は融資してくれない。数年後に融資による資金調達を期待しているのであれば、企業体質の健全化と業績好調をアピールする意味でも若干の法人税を払ってでも会社に利益を残すことが、将来のための経営戦略としては賢いケースもある。
会社利益:社長報酬のバランス感覚
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社長が安定した生活を送れるだけの給料を確保しつつ、会社にも利益が残るような仕組みを作るためには「会社利益:社長報酬」のバランスを50:50にするのが最もわかりやすい。利益が1000万円の場合なら会社利益500万円、社長報酬500万円に振り分けるという方法だ。それによって支払うべき税額を計算してみると
◎会社の税金=500万円×46.36%=231.8万円
◎社長の税金=36.2万+24.6万=60.8万円
<内訳>
・課税対象金額=500万−給与所得控除154万=346万円
・所得税=346万×20%−33万=36.2万円
・住民税=346万×10%−10万=24.6万円
★すべての支払い税額=231.8万+60.8万=292.6万円
※利益1000万円の全額を社長の給料として支払う税額(195万円)と比較すると約97万円の税金を多く支払う計算になる。
総合的な有利・不利の考え方
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税理士がクライアントに対して優秀なアドバイスをする場合、すべての企業に対して法人税を多く支払わせることには「?」がつく。現実に法人でも家族運営に近い零細企業や従業員が数名程度の中小企業の場合には、会社の利益分をすべて社長の給料とすることで、税率の低い個人の所得税として納税しているケースが圧倒的に多い。
SOHOとして有限会社を設立したが、将来的にもSOHO規模のスモールビジネスを維持する方針があるなら節税の視点から高額な法人税を支払うよりは個人所得として納税額を抑えた方が理にかなった選択であることは事実だ。
ただし「株式公開」「ベンチャーキャピタやエンジェルルからの出資」「銀行からの大規模な融資」を将来的に期待しているなら総合的な納税額は増えても毎年の決算を黒字化させて法人税を納めていくことが高い評価につながる。また事業の拡大により従業員数が増えてきた段階でも「社長の給料だけが高く、会社が赤字」の状態では従業員達の労働意欲が冷え込んでしまうので注意が必要だ。
総合的な「会社利益:社長報酬」に対する有利・不利の考え方は自分の事業に対する方向性や考え方、規模によって最も適した方法を選択するのが好ましい。
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