ワクチンパスポートの開発と規格統一を目指す業界構造
新型コロナワクチンの集団接種と同時に、ワクチン接種の記録を管理するシステムの開発も各所でスタートしている。米疾病対策センター(CDC)では、米国内すべての接種者に対して、紙の記録カードを発行している。紙カードを基本とするのは、すべての米国民に配布できるようにするためだが、スマートフォンのユーザーであれば、電子化された証明書のほうが使い勝手が良い。
そこで、米カリフォルニア州のロサンゼルス郡(人口1020万人)では、「ロサンゼルス・ウォレットパス(Los Angeles Wallet pass)」というスマホ用アプリの開発に着手している。このアプリでは、PCR検査を受けた際の判定結果とワクチンの接種証明をApple WalletまたはGoogle Payに記録して、デジタルで所持できるようにすることを目指している。それらのデータは雇用主、航空会社、学校などと共有できるオプション機能も用意される予定だ。
ロサンゼルス・ウォレットパスの開発を担当するのは、ロサンゼルス郡ウェストハリウッド市で2012年に創業したHealthvana(ヘルスバーナ)という会社で、HIVウイルスの感染対策アプリを開発してきた実績がある。
ロサンゼルスの他にも、今後は各所でワクチンパスポートが開発されることになるが、それらの仕様は規格が統一されて、相互利用できるようにしていくのが理想だ。そこで、Microsoft、Oracle、Salesforceなどの大手IT企業が参加する形で「Vaccination Credential Initiative(VCI)」という連合体が、2021年1月に設立されている。
■Vaccination Credential Initiative(VCI)
この組織の目的は、ワクチンパスポートの規格を統一して、VCIに加盟するIT企業が、関連のハードやソフトウエアを製品化しやすくすることにある。具体的なワクチンパスポートの仕様としては、ワクチン接種を受けた個人が、暗号化された接種証明のデジタルコピーをスマートフォンのデジタルウォレットに保存する機能と、スマートフォンを持たない人向けには、紙の接種証明カードに印字されたQRコードをスキャンして、簡単に電子認証できる仕組みが考えられている。
たとえば、高校や大学に通う学生は、学校から発行されるヘルスアプリの中で、ワクチンの接種記録を保存しておけば、入場時に接種証明が求められるコンサート会場や、就職の面接会場でも自動認証されるようになる。個人の健康データをどこまで共有するのかは、また別の議論になるが、テクノロジーの方向性としては、すべての人が健康パスポートを所持するデジタルヘルス社会へと向かっている。
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