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旧車レストア市場で導入されるオンデマンド部品製造

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JNEWS会員配信日 2020/9/27

 近頃は20年から30年以上が経過した古い車(旧車)を、新車当時の状態に再生するレストア市場が成長しているが、そこで困っているのが部品の調達である。
新車当時の部品は既に生産中止になっているため、中古部品を探すしかないが、程度の良い物は少なく、昨今の旧車ブームにより中古部品の相場も高騰してきている。そこで、旧車市場の中でも人気の高い車種のパーツを、3Dプリンターやレーザー加工機で再生することが、新たな事業として成立するようになっている。

自動車メーカーでも、古い部品の設計データは、紙の図面でしか持ち合わせていないため、3Dプリンターで復刻再生するには、現存する部品を精密にスキャンすることで3Dデータ化した後に、注文に応じてオンデマンド製造している。メーカーの復刻部品は、耐久試験や走行テストをした後、純正品として販売されるため、その分だけ価格も高い。

自動車には2~3万点の部品が使われているため、中小の製造業者が旧車レストアの部品製造で参入できる余地がある。工業製品の部品は、特許権やデザインの意匠権で権利が守られている一部のもの以外は、純正メーカーの許諾無しでサードパーティ部品を販売することに問題は無いと考えられている。

 欧州や米国では、人気車種の交換パーツを純正品よりも安価に製造販売するサードパーティー業者が登場してきている。英国の「X8R」はその一つで、BMW、アウディ、アルファロメオ、メルセデスなど欧州メーカーの旧型車を中心として、壊れやすかったり、定期的な交換が必要な消耗パーツを独自に製作して、公式サイト、アマゾン、eBayなどからネット直販している。

X8R

たとえば、BMWが1993~2006年にかけて生産した6気筒エンジンは、同社が独自に開発した可変バルブタイミングユニット(Vanos)からオイル漏れを起こして故障しやすい特徴がある。これはエンジン内で使われるシーリング用ゴムの耐久性に問題があることがわかっているが、BMWでは交換用のパーツは提供せずに、症状が出た場合にはVanosユニット全体の交換で対応している。そのため、ユーザーは非常に高額の修理代(40~50万円)を負担しなくてはいけない。

そこでX8Rでは、Vanosユニットの故障修理や予防的な交換に必要なゴム製シール部品一式をセットにしたキットを140ポンド(約2万円)で製造販売している。
Vanosユニットの故障対策は、BMWの該当車種に乗るユーザーにとっては悩みの種であったことから、英国内に限らず世界からの注文がある。

BMW Vanosユニット修理キット(X8R)

このような純正部品の欠陥は、多くの自動車メーカー、車種に存在しているが、メーカーは公式には認めずに、対策部品も出していないケースが多い。X8Rは、自動車愛好者が集まるネットコミュニティなどで、各車種の故障しやすい箇所をリサーチした上で、ニーズの高い交換用パーツの商品企画を立てている。3Dプリンターによる部品の試作を行い、正式製品としての生産は外部の提携工場に発注される流れとなる。

自動車メーカーの純正部品は、最も品質が高いという印象があるが、実際には製造コストとの兼ね合いで、品質面で妥協された材料が使われており、10年以上の耐久性までは保証されていない。一方で、名車にできるだけ長く乗り続けたい旧車愛好者は増えていることから、純正以上の品質でサードパーティ部品を供給するビジネスが成り立ち始めている。

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