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携帯電話を活用したエリア・マーケティングを
成功させる急所
written in 2004/4/17

 米国におけるオンラインクーポンは、パソコンからwebサイトへアクセスする方法がまだ主流であるが、やはり買い物の前にパソコンを操作してクーポンを取得することは煩わしく、そこで利用率が伸び止んでしまう欠点がある。日本では主婦層の情報ツールがパソコンから携帯電話へと移行していることから、これからは携帯電話による実店舗の販促活動が伸びていく流れが予測できる。しかし携帯電話によるエリアマーケティングの手法は、まだ“教科書”が存在していないため、各店舗経営者らが自店に合った方法を開拓していく努力が必要になる。

QRコードやICタグの普及によって、携帯電話向けのオンラインクーポンは、これから広く普及していくことが期待されている。例えば、読み捨てにされてしまうことの多い折込広告に、QRコード形式のクーポンを刷り込めば、クーポンを利用した来店客を簡単に組織化することができるため、1回の配布に数十万円かかる折込広告料を無駄にすることなく、トータルでの広告宣伝費を抑えることが可能だ。

携帯電話向けのエリアマーケティングでは、ターゲットとする商圏内に住む消費者のアドレスをいかにして収集するのかが一番の課題となるが、携帯クーポン持参者に向けた割引、または無料サービスを実施するという方法が最もわかりやすい。店側にとっては「クーポン割引率」が実質的な顧客獲得コストになるわけだが、これは他の方法と比較するとかなり負担額が小さくて済む。

仮に、新規開店のレストランが、千円相当のランチが無料になる携帯クーポンを発行したとしても、ランチの原価率が約4割とすれば、顧客獲得コストは 400円で済むというわけだ。顧客側でも魅力的な割引特典を得られる対価として、自分のアドレスを教えることには理解を示しやすい。携帯電話によるマーケティング戦略では、顧客の携帯アドレスさえ教えてもらえれば、メールを通してほとんどの販促活動ができてしまうため、氏名や住所、電話番号などの詳しい個人情報を収集する必要性はあまり感じられない。

《携帯クーポンによる固定客獲得の流れ(例)》

    携帯クーポンによる固定客獲得の流れの例

エリア広告の情報発信拠点とする携帯版サイト

     近隣商圏に向けた携帯マーケティングを成功させるためには、携帯クーポンの実施と共に、携帯版サイトの構築もかなり重要な項目として意識しておきたい。顧客から携帯アドレスを登録してもらった後の情報発信は、主にメールで行うことになるが、携帯メールだけで伝えられる文字数は全角 250文字程度と少ないため、詳細情報は携帯サイト上で確認してもらうという流れがわかりやすい。

    従来の方法では、まず最初にPC版のwebサイトを立ち上げた後に余裕があれば携帯サイトも作るという考え方が主流であったが、実店舗が狙う消費者層はPCユーザーよりも携帯ユーザーのほうがピタリと合うため、携帯サイトによる情報提供に力を入れたほうがダイレクトな効果が得られやすいだろう。

    そのためには、携帯ユーザー向けの各種機能やコンテンツを揃えることが重要。消費者が外出先からでも簡単にアクセスできて、便利かつ豊富な情報や機能が導入されている携帯サイトというのは、全国的にもまだ成功事例が少ない。携帯サイトが高度に求められる部分として大きいのは、モバイルメディアであるがゆえに、リアルタイムに近い頻度で実現可能な情報更新機能である。

    例えば、日中働いている主婦が、仕事帰りにスーパーで買い物をする際に、今朝の新聞に折り込まれていたのと同じ特売セールの情報を、携帯サイトからもチェックできたら便利だという声は大きい。しかも、人気の特売商品はすぐに売り切れてしまうため、携帯サイト上ではチラシ掲載商品の在庫状況が随時更新されていると、サイトへアクセスする頻度は高くなり、主婦を固定客化させる流れへと繋げられる。

    またレストランや居酒屋では、携帯サイト上から店内の混雑状況がリアルタイムで確認できたり、オンライン予約ができる機能が求められている。サラリーマンが職場の仲間と仕事帰りに飲みに行く店を探す時間帯は、当日の夕方5時以降が圧倒的に多いが、その時間から社内のPCでネット検索するのはかなり面倒であることを考えれば、携帯サイトで詳しい情報が頻繁に更新されている店ほど利用しやすいことがわかる。

    《実店舗の携帯サイトに求められる便利な機能例》

     ・特売セールの情報検索と在庫状況が確認できる機能
     ・店内の混雑状況をリアルタイムで確認できる機能
     ・店舗の地図と、外出先(現在地)から店までのナビゲーション機能
     ・オンラインクーポンの発行機能
     ・会員ポイント数の確認機能
     ・商品やサービスのオンライン予約機能 他

携帯向けASPサービスを利用した店舗プロモーション

     これまでの携帯サイトはPCサイトよりも「情報量が少なくて低機能」という印象があったが、最新の携帯電話は“電話付き情報端末”といえるほど高機能化していることから、その性能を十分に活用できるだけの携帯サイト・ソリューションは、PC版のサイト構築よりもこれから大きく伸びる可能性がある分野だ。

    そこで、実店舗が携帯電話向けのマーケティング活動をできる機能をASPとしてレンタルするサービスも国内でいくつか登場しはじめている。いずれも月額数千円〜数万円程度の費用で利用できるため、店主は自前で多額の設備投資をすることなく、簡単な日々の作業だけで店舗の携帯版プロモーションをおこなうことができる。その中でもeコマース・ソリューションの分野では定評のある(株)シーポイントが開発する、携帯メール配信ASPの「呼びこメールJ」は、大手外食チェーンやビデオレンタル店、飲食店、居酒屋などを中心に、現在までに全国350店舗へ導入されている。

    呼びこメールJ

    同システムの導入店では、店に来店した顧客に対して、割引会員の登録手続きを携帯電話から指定のアドレスに空メールを送ってもらうだけで完了させて、その後は店側から各会員の携帯アドレスへタイムリーな特売情報や新サービスの案内などを配信している。「呼びこメール」独自の機能として、画像添付付きのメールを配信できるため、店主(または店員)がカメラ付き携帯で本日のオススメ商品の写真を撮影して、そのまま会員顧客に対して送信するといったタイムリーな使い方もできる。

    スーパーマーケットなど生鮮品を扱うショップでは、在庫の売行き状況に応じて商品の価格を変動させていきたいが、紙のチラシ広告では印刷〜配布準備の都合上、数日前に固定の売価を決めておかなくてはならない。しかし、携帯メールによる販促であれば、売れ残りそうな生鮮品の状況を見ながら値引価格を決めて、午後4時頃に画像付きの特売メールを送信、閉店までに在庫を完売させるという活用方法も考えられる。

    《呼びこメールの活用事例》

     ●限定品販売・在庫品販売などのセール告知
     ●新商品、新サービスの告知
     ●割引クーポンの配信(メール受信者のみの割引セール)
     ●タイムサービスの案内
     ●毎日のランチメニューを画像付きで配信
     ●来店者に対するアンケート企画の実施

    「呼びこメール」の利用料金は初回のサーバー設定費用が 8,400円、月額基本料金が10,290円。この基本料金で 3,000アドレスまでの登録、月間12,000通までのメール配信ができる。これを上回る場合には500アドレス毎に 525円、1,000配信毎に 1,050円のオプション料金が追加される体系になっている。新聞の折込広告が1回の配布で数十万円の費用がかかることと比較すれば、携帯メールによる宣伝コストは大幅に安いと言えるだろう。呼びこメールに限らず、これからは紙の広告媒体と携帯マーケティングとを併用させた店舗の販促活動が主流になっていくことを意識しておきたい。

技術のみに溺れずに消費者心理を掴む

    携帯メールによる実店舗向けマーケティングの広告効果(来店率)については、今のところは郵便DMによる来店率よりも一桁以上高いという報告もある。ただし、これは新形態広告の珍しさも手伝っているため、この販促手法が定着すれば、もう少し安定した(低い)水準に落ち着いていくだろう。高レスポンスを維持するための秘訣は、スパムメール化しないことを配慮して、常に中身の濃い情報や案内を、的確なタイミングで配信することである。

    携帯ユーザー向けの販促を目的としたソリューションは、これから続々と新しい技術が登場してくる予定だが、店舗の経営者はその中から自店の特徴に合うもののみを上手に選別して活用していくことが大切。新しい手法をただ先取りするだけでは“技”に溺れて、肝心の消費者を置き去りにしてしまう。高度なマーケティング機能を安価で手に入れることができる時代でも、それを上手に使いこなして現実の成果へと結びつけるためのノウハウは、一日一夜では築けないところに、消費者心理の難しさがあるのかもしれない。

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