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メールマガジン市場の仕掛け人
"まぐまぐ" 99年の動向


"まぐまぐ" 99年の動向
"まぐまぐ" 99年の展望
"まぐまぐ"に学ぶ地方ベンチャーの成功法則
成長規模に合わせた設備投資
パートナーとの効果的連携
東京にいないから成功した



"まぐまぐ" 99年の動向

 日本人独自のインターネット文化の象徴はメールマガジンなのかもしれない。通信インフラの環境が米国より劣っている日本国内ではヘビーなグラフィックが置かれているWebが最適な情報収集ツールではなく、もっと手軽に低コストで利用できる電子メールの有効活用に人気が集まっている。これを情報発信メディアとして応用してしまったのがメールマガジンだ。国内には有料、無料を合わせて5000誌以上のメールマガジンが存在しているが、これは世界的に見ても特異なケースだ。

 インターネットが米国から普及し始めた95年当時は「ネットサーフィン」という言葉が大流行し(インターネット=Web)という風潮が広まったが、4年後の今ではネットサーフィンという言葉自体が死語になりつつある。インターネットに慣れたユーザー達の間では「Webはランダムに毎日巡回するものではなく、必要な情報を得たい時にだけアクセスするもの」という認識が広まっている。

 一方、電子メールの受信環境があれば誰でも利用できるメールマガジンが国内ユーザーの主な情報収集ツールとなっているのが今の状況。まずはメールマガジンで注目Web情報をチェックしてから、興味のあるWebにアクセスするのが情報収集法の定番だ。

 これだけ国内インターネット市場でメールマガジンがブレイクしたのには簡単に誰でもメールマガジンを配信することができるシステムを無料提供している『まぐまぐ
http://www.mag2.com/ 』の存在を抜きには語れない。Webを制作するには面倒なHTML言語やグラフィックの処理方法を覚えなければならないが、メールマガジンならワープロやエディタで原稿を作成して、"まぐまぐ"経由で送信すればすべての作業が完了する。この手軽さが情報発信者側に支持されて"まぐまぐ"はアッと言う間に生命体のごとく急成長を遂げてしまった。




"まぐまぐ" 99年の展望


 ビジネスモデルとしても"まぐまぐ"は成長を続けている。99年1月7日に"まぐまぐ"を運営する有限会社ユナイテッドデジタル(京都市)は"まぐまぐ"運営のパートナー企業である株式会社ネットアイアールディー(京都市)と共同で「株式会社まぐまぐ」を設立してメールマガジン配信サービス事業を分社化した。

<株式会社まぐまぐの概要>
  資本金:1000万円
  出資比率:(有)ユナイテッドデジタル 75%
       (株)ネットアイアールディー 25%
  所在地:京都市(京都リサーチパーク)
  代表取締役社長 大川 弘一(ユナイテッドデジタル)
  取締役     深水 英一郎(ユナイテッドデジタル)
  取締役     白石 岳(ネットアイアールディー)

 新会社設立により、急成長してきた"まぐまぐ"を運営者側も客観視することで、ユーザー側のニーズを更に反映するための基盤を固めたことになる。そして"まぐまぐ"が単なる無料サービスでなく「メールマガジン配信事業」としても本格的に軌道に乗り始めたことを意味している。

 (株)まぐまぐとしては従来通りの無料配信インフラを安定稼働、充実させると共に、新しい分野のコンテンツ配信事業にも着手していく予定。具体的には99年2月より有料コンテンツの課金販売システムの試験運用を始める。これは紙媒体の雑誌記事や小説といった有料コンテンツをメールマガジン形式として簡単に課金、販売するためのシステムでコンテンツ販売価格の10%を"まぐまぐ"が配信課金手数料として受け取り、残りの90%をコンテンツ発信者が受け取る仕組みだ。

 従来の出版ビジネス(紙媒体)ではプロの小説家、ライター達は自分の原稿が書籍化された場合、販売冊数×価格の8〜10%程度を印税として受け取る。しかし"まぐまぐ"でのコンテンツ販売では売価に対して90%の収入となり、その上、紙媒体には付きのもだった売れ残りの在庫リスクを抱えることもない。才能はあるがチャンスに恵まれずに本が出版できなかった作家達もリスク無しで採算性の高いオンライン出版から人気に火を付け、知名度が高まる紙書籍出版へと発展させる流れが現実的なものとなりそうだ。

 同社ではその他にも高品質な音楽を再生することができるMP3ファイルの配信サービスにも興味を示している。

 そして今までの"まぐまぐ"運営母体であるユナイテッドデジタルでは「第二の"まぐまぐ"として育てられる事業」を開拓していく予定。電子メール関連事業を中心として有望ビジネスを開拓していくが、魅力的な技術やコンセプトを持った起業家やベンチャー企業とは積極的に協力・提携関係を結び、場合によっては同社がパートナー側に対して出資していく準備もあるという。

 "まぐまぐ"というサービスがネット上に初めて登場したのが97年1月7日。株式会社まぐまぐの設立日は、それからちょうど2年後の99年1月7日。インターネットビジネスの中でも特に競争が激しく設備投資需要が大きなインフラ部門において、2年間で誰もが認めるメール配信事業ナンバーワンの成果を収めた同社は今でもアルバイトスタッフを含めて総勢7名のスモール企業だ。これがインターネットビジネスの魅力であり可能性であることを再認識しておきたい。

■まぐまぐ
http://www.mag2.com/
■ユナイテッドデジタル
http://www.united-digital.com/
■ネットアイアールディー
http://www.netird.ad.jp/




"まぐまぐ"に学ぶ地方ベンチャーの成功法則


 「資金力がなければ成功することはできない」「首都圏でなければベンチャービジネスは流行らない」と考えている独立希望者は多い。すなわち「自分には資金が無いから成功できない」「自分は東京に住んでいないから有望な先端ビジネスが手掛けられない」と簡単に諦めてしまっている人がたくさんいる。

 しかし首都圏でなく京都市を拠点とした小規模運営の"まぐまぐ"の活躍は、そういった既成概念を打ち崩してくれるだけのパワーを持っている。少なくともインターネットビジネスにおいては地理的条件と資金力が成功するための絶対的な条件ではないことを教えてくれている。

 98年12月時点の"まぐまぐ"の月間売上高は1000万円を超えている。これはすべて「ウィークリーまぐまぐ」という"まぐまぐ"利用者に対して配信されるメールマガジン(84万部配信)から得られる広告掲載収入である。98年1月時点の月間売上高は100万円だったことから1年間で売上高が10倍以上に拡大したことになる。

 インターネット関連ベンチャー企業の中で月商1000万円クラスは他にも探すことができるが、"まぐまぐ"を生み出したユナイテッドデジタルの特筆すべきは、金融機関やベンチャーキャピタルからの資金援助に頼ることもなく、全くゼロ地点の起業から無借金経営のままで現在の売上規模にまで成長した点にある。そして起業から現在に至るまでのどの時点においても(売上高:経費)のバランスで黒字経営を継続している上手さだ。スタッフも少人数体制(正社員2名+アルバイト社員)であることから利益率は他の企業と比べて極めて高い。




成長規模に合わせた設備投資


 現在の"まぐまぐ"システムは1日あたり150万〜170万通のメールを配信し、機能的には300万通/日配信にまで耐えられるように構築されている。しかし最初から多額の資金を投入して、これだけの大規模なシステムを揃えたわけではない。

 最初は中古パソコンの部品を寄せ集めて構築したサーバーから始まり、利用者とメールマガジン登録数の増加傾向に応じて徐々にシステムを向上させていった。元々設備資金に余裕がなかったが故にプログラミングでサーバーの性能を補うノウハウと事業コンセプト、社風が生まれ、結果としてそれが現在の高利益率体質をもたらす要因となった。

 それでも利用者の急激な増加傾向に合わせて、完全処理できるだけの技術開発や設備増強は怠らず、利用者側のニーズにほぼ完璧な形で答えられた点が、他の企業には簡単に真似のできない部分であり、国内利用者ナンバーワンを達成した理由だ。

 決して設備投資過剰にならず需要増加カーブに応じて徐々に運営側も成長していく。これが急激な変化を伴うインターネット事業において常に黒字を確保する重要なノウハウであり、大企業にとっては不得手な経営手法だ。

<"まぐまぐ"利用者の増加傾向>
 97年 1月  "まぐまぐ"運営開始
 97年11月 総読者登録数100万人突破
 98年 3月 総読者登録数200万人突破
 98年 9月 総読者登録数500万人突破
 98年11月 総読者登録数700万人突破




パートナーとの効果的連携


 "まぐまぐ"が大きく成長できたもう一つの理由は需要を上回る容量の専用線確保と回線を効率的に使うメール配信技術にあった。専用回線費用は最もコスト的に負担の大きな部分であり、これを真正面から受けとめてしまうと事業としては採算が合わなくなる。

 そこで回線面でのサポートとノウハウ提供をしてくれたのが新会社の共同出資者であるネットアイアールディー(NetIRD)である。NetIRDは企業向け専用線プロバイダやネットワーク設計を本業としているため、限られた回線容量を最も効率的に利用する優れたノウハウを持っている。『NetIRDさんのサポートがなければ現在の"まぐまぐ"はあり得ませんでした』とユナイテッドデジタル社長の大川氏は語る。

 ユナイテッドデジタルとNetIRDは共に京都市内にある「京都リサーチパーク」というインキュベートセンター内にオフィスを構えている。その中での出会いが"まぐまぐ"を生んだわけだ。"まぐまぐ"を作るために意識的に出会ったのではなく、お互いが持っている専門分野のノウハウを連携させることで自然な形として"まぐまぐ"が生まれ、成長していったという流れだ。

■京都リサーチパーク
http://www.krp.co.jp/




東京にいないから成功した


 『インターネットビジネスを効果的に展開するためには東京にいないほうが良い』というのが大川氏の持論。

 首都圏では自分たちのビジネスを展開していく中で、様々な雑音や誘惑が入り、気付かない内に長期的事業コンセプトが崩れていくベンチャー企業が少なくない。首都圏から間隔を置くことで自分たちの目指すコンセプトに集中することができるという視点だ。

 「ウィークリーまぐまぐ」に広告を出稿するクライアントの大半は東京の大企業だが、1本60万円の広告注文もすべてがメール経由で舞い込んでくる。京都−東京間だから直接営業するという発想は最初から持たず、電話での広告受注も受け付けていない。クライアント側も京都の会社と取り引きするわけだからメール対応だけでも納得してもらえる。

 これが東京−東京間の取引なら「直接会って説明してほしい」とか「大口クライアントにはご挨拶に伺わないと」といったアナログ的な負担が大きくなり、結果として経費が増加し利益率の低下につながるのだ。

 確かにインターネット上を観察してみると独自性を貫いた事業を展開しているベンチャーは地方に分布していることが多い。JNEWSの場合には「事業」というよりは「情報の独自性・中立性」という観点から東京と大阪のちょうど中間地点にある浜松市を拠点にしていることの意義を常々感じているが、やはり雑音や誘惑は少なく自分達の活動に集中することができている。

 ベンチャー起業家にとって大切なのは「成功するために環境を新たに造る」のではなく「今ある環境の長所を最大の武器として競合との差別化をはかる」という工夫なのだろう。東京には東京の、地方には地方の、SOHOにはSOHOの、それぞれ成功法則があり、身近にある環境をポジティブな視点で活用努力することが重要なのだろう。

 「メールマガジン配信事業」という新しい市場を切り開き、業界ナンバーワンのシェアを獲得したのが東京の大企業ではなく、地方のスモール企業であったことはベンチャー起業家にとって喜ばしい希望の光だ。「第二の"まぐまぐ」となる事業コンセプトは今、何処の街で眠っているのだろうか・・・。

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JNEWS LETTER 98.10.4
<超人気サイト"まぐまぐ"のビジネスとしての方向性>
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