「障害者→障がい者」「看護婦→看護師」のように、差別や偏見が感じられる用語の使い方を改めようとする風潮は、ポリティカル・コレクトネスと呼ばれている。企業が発信するコンテンツには平等や中立性を意識した表現と、フェイクと受け取られない広告手法が重視されている。
ポリティカル・コレクトネスと炎上特性

JNEWS会員配信日 2017/5/3

「障害者→障がい者」「看護婦→看護師」のように、差別や偏見が感じられる用語の使い方を改めようとする動きは、日本では2000年頃から広がりはじめたが、多様な民族が暮らす米国では1980年代から指摘されるようになっている。

このように、社会的な平等や中立を意識した言葉を使っていこうとする風潮は「ポリティカル・コレクトネス」と言われている。当初は、政治的な発言の中で意識されはじめたものだが、最近では、企業が発信するメッセージの中でも、一部の人達に不快な印象を与えたり、偏った表現だと受け取られると、ネットで炎上が起きて、会社のブランドイメージを傷つけることになってしまう。

たとえば、女性の敬称を表す「ミス」や「ミセス」の呼び分けは、婚姻関係の差別に繋がることから、公的な場でも“使わない”配慮がされるようになっている。
「Man(マン)」が接頭や接尾に付く言葉も全体的に注意が必要で、下水道の出入り口は、「マンホール」ではなく、「メンテナンスホール」または「ユーティリティホール」と呼ぶことが、変な誤解を招くリスクを少なくする。

そうした風潮はさらに進行して、ネット業界のメイン収益である広告ビジネスにも影響が及んでいる。海外では、大手企業が YouTubeやFacebookへの広告掲載を取り止める動きが相次いでおり、米通信会社のAT&T、携帯電話会社のバライズン、生活用品メーカーのジョンソン・アンド・ジョンソン、英国のマクドナルド、トヨタ、アウディなど、その数は日々増えている。

SNSに投稿される記事や動画の中には、人種・民族、宗教、性別、障害などを差別や憎悪の対象として表現するコンテンツが多く含まれており、そこに自社の広告が掲載されることを避けるためである。

さらに、ネットに掲載されるコンテンツの中には、偽物の情報が多く含まれるようになったことも、大手の広告主が警戒を強めている要因である。英国のEU離脱を決める国民投票、米大統領選挙の際には、偽のニュース記事(フェイクニュース)を流すサイトが多数表れて、投票結果に大きな影響を与えたとみられている。

米BuzzFeed Newsの分析によると、米大統領選挙前の3ヶ月間で、フェイクニュースが、フェイスブック上でエンゲージメント(いいね、シェア、コメント)された総数は 871万回で、ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、ハフィントン・ポストなど、大手ニュースサイト記事のエンゲージメント回数(736万回)よりも多い。奇をてらったフェイクニュースは、衝撃的な話と信じて世界中にシェアされていくため、ウイルス性が高いことが指摘されている。

特に『ヒラリー・クリントン氏は、テロ組織ISISに武器を売却している』という偽ニュースの広がりは、ヒラリー陣営に甚大なダメージを与えることとなった。


ネットに誰でも容易に記事を投稿できるようになったのは良いことではあるが、その内容がすべて正しいというわけではなく、そこに自社広告が挿入された企業は、フェイク(偽)ニュースの協賛先という捉え方をされてしまうリスクがある。

ポリティカル・コレクトネスへの傾倒や、フェイクニュースの広がりは、企業が広告や情報発信の方向性を見直す転機となるのは間違いなく、そこではアマチュアとは一線を画した、コンテンツ制作の専門職が見直されるようになってきている。(この内容はJNEWS会員レポートの一部です。正式会員の登録をすることで詳細レポートにアクセスすることができます記事一覧 / JNEWSについて

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・フェイクニュースを見破る監視・対策市場
・企業が求めるプロライターの需要と育成ビジネス
・ネット社会の炎上が起きるメカニズムの解明と対策
・トランプ大統領を生み出したサイレントマジョリティ
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・多様化社会に適応する企業対策と従業員トレーニング

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