オンラインショップ経営術
  
Top > オンラインショップ経営術
 
JNEWS LETTER
2週間無料体験購読
配信先メールアドレス

RDF

Google

WWW を検索
JNEWS.com を検索
これからのショップ経営に求められる
商品需給バランスの予測術
written in 2003/11/18

 前号で掲載した無在庫オペレーションと供給調整の記事はショップ経営者の方からたくさんの反響をいただいた。やはり実際にショップを経営されている立場で今一番考えていることは、「在庫のリスクをどのように軽減するか」「商品の値崩れをどのように防ぐか」といったテーマにあるようだ。このような問題に直面しているのは「オンラインで商品を売ること」に関しては、自分なりのノウハウを既に開拓して、その先のオンラインショップの将来像を見つめている人達である。

インターネットによる物販は中小の商店主に大きな夢や宝物を与えた反面、誰でも参入できる容易さから同業者が乱立しはじめている。仕入れることが簡単な商材であれば、すぐにネットオークションに出品されて安値で落札されていく。商品の価格は「需要と供給のバランス」によって決まるのが経済の法則であるため商品が供給過剰になったり、売り手(ショップ)の数が増えれば、自ずと価格相場は下がっていくのが原則。一時的には販売技法によって値崩れを抑えることができるかもしれないが、長期的にみればやはり商品が短命化していく流れは避けられない。

そこで正しい販売量の把握や予測ができれば、商品が供給過剰になることは防げるのだが、現実には「その商品が全国でいまどれだけ売れているのか」を誰も正確に掴めていないことも多い。もちろんPOSデータなどを活用して情報武装することは行なわれているが、逆に、この“情報”によって小売店側もメーカー側も振り回されて冷静な判断力が鈍ってしまうこともある。

売れ筋情報が加速させる商品の陳腐化

     テレビの情報番組、消費者の口コミ情報、さらにPOSデータを集計した売れ筋情報など、現代のショップ経営者は様々な情報を収集しては、いち早く“売れ筋商品(人気商品)”を仕入れようとする行動に走る。

    そのため「Aという商品が人気だ」と、どこかの媒体を通じて情報が流れると、全国の小売店ではこぞって商品Aを卸業者やメーカーから仕入れようとする。メーカー側ではこの段階で出荷額が急増するために「商品Aが売れている」という評判が世間にも広がる。この噂が消費者にも伝わって一時的なブームとなるが、その熱が冷めれば、商品本来の実力である販売量しか売れなくなってしまう。それ以上に出荷された在庫分はダンピングしてさばくしかない。このように“情報”によって供給量のコントロールに失敗するケースが近年では増えているのだ。

    《情報によって商品が短命化するシナリオ》

      情報によって商品が短命化するシナリオ


    このようなシナリオの最も恐いのは、ブームが加熱している状態では「実際にどれだけ売れているのか」をメーカー・卸業者・小売店のいずれもが正確に把握できていない点である。

    POSによって販売データを管理しているのは、一部の量販店や大手チェーン店のみであり、全国の小売店データがメーカーによって集計されているわけではない。そのため量販店のPOSデータが“売れ筋”と示した商品に他の小売店も追随しようとするため、全国の市場全体では誰も実態が掴めないままに、商品の供給量が需要量を上回ってしまう。

需給バランスの予測が鍵となる今後のショップ経営

    情報が商品の販売にそれほど影響しなかった時代には、メーカー側が適度なリードタイムを設けて徐々に商品を供給していくことができた。そのため商品の寿命は比較的長くて、その間は値崩れをおこすことがなかった。しかし現代では、実際の商品の供給よりも先に情報が広がり、大量の注文が入ってしまうため、メーカー側でも適正な供給量を見誤ってしまう。

    インターネット販売が台頭するようになり、メーカー側でも把握できない売り手(ショップ)が多数登場するようになって、供給量のコントロールはますます難しくなってきている。そこで今後のメーカー側の課題としては、販売店網を適正な規模に絞り込むことが必要になってくる。そして販売網との在庫情報共有により、市場全体の供給量を把握することができれば、理論的には無闇な値崩れは阻止できるようになるはず。

    ただし完全にオープンな市場であるインターネット商圏全体では、ショップの乱立に歯止めをかけることは不可能であることから、実際には供給量を上手にコントロールできるメーカーというのは少ないだろう。その面では、商品を量産しないと採算が合わない大規模メーカーよりも、もともと大規模な生産機能を持たない中小メーカーのほうが商品の価値は維持しやすいだろう。

    オンラインショップの経営者としては、オンラインの販売技法を習得する段階から、もう一段高いステージに立ち、ネットオークションなど容易なオンライン取引が狂わす商品の需給バランスに注視してみることで、これから取り扱うべき有望商材の方向性が見えてくるはずだ。