中小企業やベンチャー企業の中では、会社との間でトラブルが起きた時に、従業員が相談できる組合自体が無いケースが多い。そこで、会社の垣根を越えて結成される「合同労働組合(個人加盟ユニオン)」が全国的に増えている (JNEWSについてトップページ
労使トラブルの解決を糧とする社外労働組合の収益構造

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JNEWS会員配信日 2019/12/3

 日本でも、サービス残業、不当解雇、社内のいじめ、セクハラやパワハラなど、多様な労働問題が糾弾されるようになっているが、そうした被害を受けている労働弱者の受け皿になっているのが、会社外で結成される新たな労働組合の存在である。

日本の労働組合は、企業単位で作られている「企業内労働組合」が主体だが、企業と組合との間では、幾つかの労使協定が結ばれて、活動自体が形骸化している。
また、中小企業やベンチャー企業の中では、会社との間でトラブルが起きた時に、従業員が相談できる組合自体が無いケースが多い。そこで、会社の垣根を越えて結成される「合同労働組合(個人加盟ユニオン)」が全国的に増えている。

労働組合は、2人以上のメンバー(組合員)が集まれば設立することが可能で、組織統制を決めた規約を作成して、メンバー内の承認が得られると、労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)に基づく活動ができるようになる。その点では、労働組合の立ち上げは、資本金や登記が必要な会社の起業よりも容易な面もある。

合同労働組合は、複数の企業や異業種で働く労働者を広く受け入れており、経営者と役員以外であれば、正社員の他に、派遣社員やパート、管理職でも、個人単位で加入することができる。組合費は月額1,000~3,000円程度(月額賃金の1~2%)が相場だが、平常時から外部の組合に加入することは希であり、合同労働組合は、トラブルを抱えた労働者の「駆け込み寺」的な存在となっている。しかし、これらの組合活動はボランティアとして行われているわけではない。

《合同労働組合が扱うトラブル事例》
・月給や残業代の不払い
・不当な解雇、派遣切り
・職場内での差別、いじめ
・セクハラやパワハラ
・仕事中の傷病や過労死への対応
・その他

企業内の労働組合は「チェック・オフ」という会社側との協定により、組合費の徴収も給料天引きによって行えるが、合同労組は、加入者から自発的に納めてもらう必要があり、組合員の数も少ない。それでも活動していけるのは、トラブル解決屋としての収益構造が形成されているためだ。

合同労組は、組合員が抱えているトラブルの相談を受けた後、勤務先の会社に対して団体交渉の申し入れをする。労働組合には、法律で認められた団体交渉権があるため、会社側はそれを拒否することができない。組合側は、トラブル解決の話し合いや交渉を進めるが、その着地点は「金銭的な解決」が大半である。

賃金未払いの他にも、仕事が原因でうつ病になったケースや、セクハラやパワハラの被害に対しても、治療費+慰謝料の請求がされている。話し合いがこじれた場合には、法廷で争うことになるが、問題を表沙汰にしたくない企業は、裁判で決着を付けるよりも、示談金を払うことで「和解」とさせるケースも、水面下では多い。合同労組は、こうしたトラブル解決の成果(賠償金や示談金)に対して、成功報酬(解決金)を、相談者側から受け取る収益構造になっている。解決金のレートは10~40%と、組合によって差がある。

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