JNEWSについてトップページ
最低時給引き上げの裏側で過熱する米国の起業トレンド

JNEWS
JNEWS会員配信日 2022/7/17

 仕事や居住地を選ぶ上でも、住宅価格や物価水準を考慮した生活必要賃金を意識することが米国では重要視されるようになっている。マサチューセッツ工科大学が公開している「living wage calculator」は、全米各地の物価水準に基づいた最低生活収入を家族構成別に計算できるシミュレーションサイトとして活用されている。

living wage calculator

住宅価格が最も高騰しているカリフォルニア州のサンフランシスコ地域では、単身者の生活必要賃金として時給30.8ドルが必要だが、子供1人の家族世帯になると生活に必要な賃金額が時給53.6ドル、子供2人で59.6ドル、子供3人で69.9ドルと上昇していく。共働き世帯は、生活必要資金を2人で分担して稼ぐことができるが、家事がしにくい分だけ毎月の生活費も割高になるため、単純に1/2の負担率に軽減できるわけではない。

《米サンフランシスコの生活必要賃金》

Living Wage Calculation for San Francisco

一方、サンフランシスコから約850km(飛行機で約2時間)離れたオレゴン州のポートランド市は、人口が65万人の地方都市だが、自然環境が豊かで住宅価格も安いことから、シリコンバレー本社の企業に所属するリモートワーカーの移住先として人気が高まっている。ポートランド市の生活必要賃金は、単身者が時給21.6ドル(年収4.5万ドル)、子供2人の家族世帯が時給43.2ドル(年収9.0万ドル)となっており、サンフランシスコに住むよりはハードルが低い。

《ポートランドの生活必要賃金》

Living Wage Calculation for Multnomah County, Oregon

これらの金額は、健康で文化的な生活をするのに必要な基準額であり、贅沢ができるレベルではない。サンフランシスコで暮らす年収11.1万ドルの家族と、ポートランド市で暮らす年収7,8万ドルの家族は、同じ生活レベルであることを考えると、年収の高さで豊かさの優劣が決まるわけではない。

【生活必要資金を稼ぐサイドワーク】

しかし、どの地域の賃金相場をみても、リビングウェイジ(生活必要賃金)を上回る水準には達していない。国や州が最低賃金を引き上げることは、賃金相場の底上げにはなるが、企業の人件費負担は重くなるため、小売業ではセルフレジの導入を進めたり、時給単価以上の生産性が高い人材のみを採用することで、失業率が高くなるデメリットも指摘されている。また、最低賃金引き上げにより、さらにインフレが加速する懸念もある。

《最低賃金引き上げとインフレの関係》

そのため、コロナ禍以降のインフレが続く中では、雇用主からの賃金のみに頼るのではなく、自分のビジネスも併用して事業収入を稼ぐ道が推奨されるようになっている。中小事業者向け会計ソフトのQuickBooksが、米国労働者の8000人に対して行った調査では、5人に3人(57%)が起業を望んでおり、その中の5人に1人(20%)は実際にビジネスを立ち上げている。

米国では、個人事業主または法人が従業員を雇う際に、雇用者識別番号(EIN)の取得が必要になるが、その取得数は2020年には430万件だったのが、2021年は530万件に増加した。さらに2022年は560万に増える見通しだ。新規開業者の中で、従業員を雇用する割合は3人に1人であることから、QuickBooksでは2022年だけで1700万人の起業者が生まれると推定している。

《米国雇用者識別番号の取得数》

2022 projected to be another record year for new business starts

この内容はJNEWS会員レポートの一部です。正式会員の登録をすることで詳細レポートにアクセスすることができます記事一覧 / JNEWSについて

JNEWS会員レポートの主な項目
・最低賃金とリビングウェイジの関係について
・家族構成からみた生活必要賃金の算定
・生活必要資金を稼ぐサイドワークの立ち上げ
・エッセンシャルワーカーから離脱する労働者
・低時給ワークからファミリービジネスへの転換
・家族経営による自宅ビジネスの開業モデル
・中小事業で深刻化する人手不足の要因と労働市場の急変
・定年後のダブルインカムを実現するシニア起業の方法
・パートタイム労働者から起きる労働組合の変革トレンド
・同一労働同一賃金で広がるリモートワークの新たな働き方

この記事の完全レポート
JNEWS LETTER 2022.7.17
※アクセスには正式登録後のID、PASSWORDが必要です。
※JNEWS会員のPASSWORD確認はこちらへ


(起業家の成功法則)/(トップページ)/(JNEWSについて)/(Facebookページ)

これは正式会員向けJNEWS LETTER(2022年7月)に掲載された記事の一部です。 JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料による情報提供をメインの活動としています。 JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。

JNEWS LETTER 2週間無料体験購読

配信先メールアドレス

※Gmail、Yahooメール、スマホアドレスの登録も可
無料体験の登録でJNEWS LETTER正式版のサンプルが届きます。
 
Page top icon