起業家のための成功法則
  
Top > 起業家のための成功法則
  新たなワークスタイルとして、ドイツには「労働時間を貯蓄する」ための仕組みがある。各社員は働いた時間を銀行口座のように記録、管理して、定時よりも余分に働いた「貯蓄分」を、家庭の用事などで忙しい時に休暇として消化することができる。
JNEWS LETTER
2週間無料体験購読
配信先メールアドレス

Counter

RDF

twitter

Google

WWW を検索
JNEWS.com を検索
労働時間をプールして自由に引き出せる
時間貯蓄の働き方
written in 2010/7/18

 いま日本の労使問題として増えるのが、サービス残業によって長時間のタダ働きを強いられてきた従業員が、退職時などにまとめて残業代を請求してくる類のトラブルである。その背後にいるのが、サービス残業訴訟を得意とする弁護士など、法律専門家の存在である。彼らは、長年にわたり無償のサービス残業が慣習となってきた企業の社員や退職者を、“顧客”として集客しはじめている。

ここ数年の間、法律業界では、消費者金融の利用者が不当な高金利を支払った分に関して返還請求する仕事が特需として発生していたが、その次に盛り上がりをみせてきたのが、サービス残業代の請求業務である。

ほとんどの会社では、就業規則で「1日の仕事は8時間」と決まっているが、実際には、それ以上に長く働いている社員が大半であることから、未払い残業代の請求や訴訟を起こされると、会社側が負けてしまう確率が高いのだ。

労働基準監督署からの立ち入り調査により、不当なサービス残業が行われていたことが指摘されて、残業代の支払いが命じられた企業の件数は、2008年度でおよそ1700社あり、総額では270億円を超す是正額になっている。

《行政指導による不払残業代の是正額》

  

これまで、タイムカードの無い職場では、実際の労働時間が曖昧になっていたが、最近では社員が使用しているパソコンのログオンとログオフ時刻や、ネットのアクセスログを調べることで、サービス残業の実態を立証しやすくなっている。

サービス残業請求で、弁護士が代理人になる案件では、未払い賃金の時効にあたる2年前までさかのぼって残業代を算定することが多いため、社員一人あたりの請求額が数百万円になることもある。そのため、複数の社員がグループとなって集団請求を起こされると、数千万〜数億円の請求額となり、中小企業であれば残業代が払えずに倒産ということもあり得るのだ。

これは、一部のブラック企業に限った話ではなく、毎日の残業が習慣化している会社であれば、どこでも当事者になる可能性がある。全国には 約600万件以上の事業所があることからすると、潜在的な未払い残業代の額は莫大で、それを商機とみて、サービス残業代の請求代行ビジネスを手掛ける業者が増えてきている。

《サービス残業請求ビジネスの仕組み》

  

企業側が残業代請求のリスクを回避するには、賃金制度や勤務体系を根本的に改めることが必要になってくる。これまで、ワークスタイルの改革は、一部の有能な社員からの要望は大きかったものの、会社側で従業員の管理が難しくなったり、社内の秩序が乱れるという理由から否定的だったのが、今後は会社側から勤務体系を緩やかにしていく動きが出始めるだろう。

会社にとっての言い分は、社員達に長時間の労働を決して強制するのではなく、法律で決められている条件の範囲で、最善の働き方をしてほしいということだ。

そのためには、“一日8時間”と労働時間を固定するのではなくて、仕事のスケジュールに応じて、出勤と退社の時間を変えられる「変形労働時間制」や、社員が自分の勤務時間を自由に決めて、与えられた仕事の達成に取り組む「裁量労働制」は、新たな勤務体系として注目されている。しかし、すべての職種に対応するには、それだけでは不十分なため、新たな時間の使い方ができるワークスタイルの開発が求められている。

起業家のための成功法則一覧へ

この記事の核となる項目
 ●サービス残業訴訟が変える企業のワークスタイル
 ●サービス残業請求ビジネスの仕組みについて
 ●残業の疲れを翌日に残さない勤務間インターバル制度
 ●1日8時間労働の呪縛から逃れるための視点
 ●暇な時期と繁忙期の勤務時間を変える変形労働時間制
 ●残業時間をプールする時間貯蓄口座の発想
 ●労働時間貯蓄口座の仕組みと活用について
 ●ワークライフバランスで考える時間の価値
 ●通勤時間の解消と在宅勤務制度の普及活動
 ●テレワークからマイクロ起業への潮流
 ●少子高齢化で求められるワークスタイル改革の切迫した事情
 ●成功報酬弁護士が掘り起こすトラブルの種と訴訟ビジネス
 ●欧州企業が推進するテレワーカー育成と社会保障問題の接点
 ●ちょいワルオヤジブームを見習うワーキングマザー市場の作り方


この記事の完全情報はこちらへ
JNEWS LETTER 2010.7.18
※アクセスには正式登録後のID、PASSWORDが必要です。

■この記事に関連したバックナンバー
 ●企業が抱えるサービス残業問題と深夜労働にかかるコスト
 ●モノ売りから時間売りへの転換〜時間消費型サービスの視点
 ●早起き人口に向けた早朝ビジネスの商機とロングテール客
 ●緻密な時間管理で生まれるタイムビジネスの仕組みと動向
 ●シングルタスクからマルチタスクへ変わる時間管理と働き方
 ●優秀な社員に時間報酬として与えられる在宅勤務制度の動き
 ●深夜帯営業の裏側で成長する従業員向け不眠対策ビジネス