大学教授になるまでには険しい道が待ち受けているが、定石どおり大学機関の中で純粋培養されて教 授職にまで辿り着いた人ばかりではなく、民間企業からいきなり助教授や教授職へと転身している人も少なくないが、そこには以下のようなカラクリがある。 (JNEWSについてトップページ
サラリーマンの実戦経験を活かして大学教授へと転身する道

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JNEWS会員配信日 2005/7/28

 「働くこと」と「勉強(研究)すること」が一致することを理想とするサラリーマンは多い。自分の好きな研究テーマに携わることで生計を立てていければ、それほど幸せなことはない。しかし営利を追求する会社の中で“好きな研究”に没頭することはかなり難しい。そこでいま注目されているのが、サラリーマンから大学教授への転身である。大学教授になるまでに普通は、助手や講師とった長い下積み期間を経てようやく“教授”へと辿り着くことができるが、近頃ではそのルートとは別に、サラリーマン時代の実績を買われて大学教授へスカウトされる人が少なからずいる。

少子化の時代を迎えて、大学は斜陽産業と言われる中で、入学者の対象を社会人へと広げていることから、企業での実戦を積んだ社会経験の豊富な指導人材が不足している。意外にも、国立大学や私立大学が採用したい“教授”の求人情報は広く告知されている。その採用条件としては、小中高の教師のように“教員免許”が必要なわけではなく、教育者としての資質があり、特定の分野で優れた研究実績を持つ人材であれば、博士号の有無に関わらず門戸は開かれている。

しかし、誰もが簡単に大学の教員職に就けるわけではない。大学側が求める人材には、やはり人気の特徴や傾向がある。近頃では、大学も自立した経営をして黒字化が求められるために、経営センスに長けた優秀なビジネス人材の採用を望んでいる。また、時代を先取りした学部を新設する大学も増えているため、研究テーマによっても教員採用の需給バランスがある。

【大学教員の世界の実態と魅力】

 知の最高学府である「大学」の教員になるためにはいくつかの道があるが、最も一般的なルートは、4年制大学の学部を卒業した後に、大学院の修士課程(2年間)と博士課程(3年間)を修了して“博士号”を取得した後に、「助手→講師→助教授→教授」と大学教員のランクをステップアップしていく道である。

しかしこの方法では、博士号を取得するまでに最短でも27歳までかかる。実際にはストレートですべての単位を習得することは難しいため、二十代までの人生はほとんど学生として過ごすことになる。博士号を取得した後も、必ず大学教員として採用される保証はない。博士号取得者の中での競争に勝ち、運良く教員としての採用が決まったとしても、そこからさらに“教授”になるまでの道のりは長い。三十代は助手~講師として過ごし、四十代で助教授、五十代で教授というのが、この世界におけるエリートコースである。もちろん、大学教員生活を三十年近く続けても、教授の席に辿り着けない人もたくさんいる。

《大学教授になるまでの平均的な道のり》

社会人としては最も働き盛りの二十代~三十代を下積み期間として費やさなくてはならないのは、ある意味“特異な世界”とも言えるだろう。博士号を習得するまでは学生の身分であるため、学費や生活費すら稼ぐことができない。そのため家族から経済面のサポートをしてもらうか、学習塾や家庭教師等のバイトで生計を立てる不安定な生活を続けなくてはならない。また、その後に博士号を取得できても、大学教員の採用が適わなかった場合には、そこから民間企業への就職はかなり厳しくなってしまう。

一方、めでたく大学教員として採用された場合には、安定した給与が保証されるが、上のポストに空席が生じないと昇格できないために、いまの大学でずっと助手や講師のポジションに甘んじたままでいるか、他の新設大学に移るのかは悩みどころとなっている。収入の面からいけば「教授」となって、ようやく年収1千万を超える水準になる。これは好条件のようにも思えるが、稼げない下積みの期間が長ければ、生涯年収はそれほど高くないという見方もできる。収入だけでいえば、上場企業のエリートサラリーマンや会社経営者のほうが稼ぐことができるはずだ。

しかし、それでも大学教員の人気が高いのは、収入以外での魅力が大きいことに起因している。研究に打ち込むための時間や環境を十分に与えられるのは、大学でなければ得られない利点といえるだろう。また研究活動の延長として、本を執筆したり講演をするなど、自分が追求したい専門分野において活動の幅を広げていくことができる。

《大学教員の平均年収(国立大学の例)》
※この年収額は大学から支払われる額で、講演料や印税等の二次的収入は含まれない。また詳細の金額は各大学の給与規定によって異なる。

【大学教授になるための条件】

 ここまでの話では、大学教授になるまでにはかなり険しい道が待ち受けていることがわかる。しかし世の中には、定石どおり大学機関の中で純粋培養されて教授職にまで辿り着いた人ばかりではなく、民間企業からいきなり助教授や教授職へと転身している人も少なくないが、そこには以下のようなカラクリがある。大学教員の資格について定めている学校教育法の中では、「教授の資格」として6項目の中のいずれかに該当することが条件となっている。

《大学教授になるための資格》

(1)博士の学位を取得していて、研究上の業績を有する者
(2)研究上の業績が(1)の条件に準ずる者
(3)専門職学位を取得していて、専攻分野に関する実務上の業績を有する者
(4)大学において教授、助教授又は専任の講師の経歴がある者
(5)芸術、体育等については、特殊な技能に秀でていると認められる者
(6)専攻分野について、特に優れた知識及び経験を有すると認められる者

前段で紹介した「博士号の取得→助手→講師→助教授→教授」というコースは(1)の条件に該当するが、実際にはそれ以外でも(2)~(6)まで、いずれかに該当している人であれば、条件面はクリアーしていることになる。(2)や(6)の基準はかなり抽象的であるため、解釈の仕方次第では、特定の分野で社会的に認められた実績や評価の高い人であれば、誰でも大学教授になれる資格を有していることになる。

なお(3)にある「専門職学位」の中には、いまビジネスマンの間で取得が流行っているMBA(経営学修士)やMOT(技術経営修士)も含まれるため、会社勤めをしながら職務に関連した学位を取得して、タイミングを見計って大学教員の求人に応募するという方法も考えられる。関連の求人は公募されているため、ネットからも簡単に調べることができる。科学技術振興機構が運営する研究者人材データベース(JREC-IN)では、国立または私立大学が募集している教員の求人情報を自由に検索することが可能だ。

研究者人材データベース

ただし、これらの求人情報には「うちの大学は人材を広く公募していますよ」と表向きのアピールをしておき、実際の人選は学内のコネですべて決めてしまうという“ニセ公募”も数多く含まれているために、真剣に大学教員職を狙うのであれば求人情報のみに頼るのではなく、自分オリジナルの戦術を練ることも必要になってくる。冒頭でも述べたように、大学教員の枠には研究テーマ等による需給のバランスがあるため、すでに成熟している分野よりも、これからの成長が期待できる分野での専門性や実績を高めることのほうが賢い。

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JNEWS会員レポートの主な項目
・大学教員の世界の実態と魅力について
・大学教授になるまでの平均的な道のり
・大学教員の平均年収について
・大学教授になるための条件、資格など
・サラリーマン転身型の大学教員が求められる理由
・大学教授への道:学会を活用した研究実績の蓄積
・大学教授への道:研究者が著書を持つことの強み
・社会人と企業を顧客として取り込み始める大学ビジネスの行方
・資格取得ブームの裏で下落する資格の価値と崩れる資格商法
・知財社会を担うサラリーマン技術者が独立起業を果たす道

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