労働分配率とは、粗利益と人件費のバランスによって算出される指標で、会社が稼ぐ収益の中で、どれだけの割合が従業員の賃金として分配されているのかを表す。人件費の高騰に収益の上昇が追いついていかなければ、労働分配率も上昇して利益は圧迫される(JNEWSについて
労働分配比率(人件費÷粗利益)から導く「潰れにくい会社」の条件

JNEWS
JNEWS会員配信日 1999/9/15

 企業の成長度は売上高や従業員数の増加傾向から判断することが多い。しかし順調に売上を伸ばしていても「内部が病んでいる企業」も少なくない。市場制覇を焦るばかりに会社の規模を急激に拡大すれば、会社内部の各所から不具合が生じるもの。

 もちろん企業の成長を追求するのは起業家として当然の行動だが、経営体質を大幅に悪化させてまで売上増やシェア率上昇を狙うことは、長い目で見れば得策とは言えない。

 企業には「潰れやすい会社」と「潰れにくい会社」がある。これは売上高の格差ではなく、利益率や経費負担の違いによって現れてくる格差だ。それらを構成している要素を簡単に説明すれば「粗利益<と「人件費」ということになる。

粗利益率が高い企業」というのは高収益型企業であるのと同時に、他社との競合面でも優位な立場にあることを意味している。「人件費負担が大きい(従業員数が多い)企業」というのは、それに付随して広いオフィスの家賃や諸々の経費も大きくなるために最終的な利益を圧迫する。

 業績が右肩上がりで推移している時期には、売上高を拡大させることで多少の粗利益が低下したり、人件費負担が大きくなったとしても大きな問題は生じないが、業績が横這いから下落傾向に入った段階でダメージがボディブローのように効きはじめるのだ。

 この様に深刻な状況に陥る前から、売上高の変化や従業員数の増員に伴う経営体質の変化を冷静な数字で常に監視しておきたい。そのための有効な指標としては「労働分配比率」がある。

【労働分配比率の算出方法】

《労働分配比率の算出方法》

 というのが労働分配率の算出公式である。ここでいう付加価値とは、「売上高(生産額)-外部購入費用(仕入原価、原材料費、外注費等)」を意味しており、物販やサービス業の場合には(付加価値=粗利益)と理解しても良いだろう。

《労働分配比率の算出方法》(物販やサービス業)

《労働分配率による経営体質の評価》

【売上増加傾向と労働分配率の変化】

 算出式の通り、労働分配率は人件費と粗利益とのバランスから経営体質を判断する指標だ。人件費と粗利益との上昇傾向が同じペースを保っていれば全体の労働分配率は同じ水準を維持するが、人件費の上昇傾向に粗利益の上昇ペースが追いついていかなければ労働分配率は低下することになり、経営環境は悪化する。経営者としては人件費よりも粗利益の増加ペースが上回る努力をしなければいけないことが理解できるはずだ。

《事例研究》

 この事例では売上高が 7500万円→1億2000万円へと上昇して、それに伴い従業員も2名増員している。傍目からは成長企業として評価できるが、粗利益が60%→45%へと低下していることを考えれば経営体質は深刻な状態へと陥っている。一旦下落した粗利益率を再度上昇させるのは容易でないために、それをカバーするためには売上高を更に高めることしか手段が見あたらなくなってしまう。無理な売上高目標の設定は更に人件費を高めることにつながり企業にとっては大きなリスクだ。

 ベンチャー企業の場合には競争が激しいことから利益率を切り詰めてでも売上を狙いにいくケースも珍しくないが、売上高が大きくなるほどに資金繰りが厳しくなるのも事実である。「利益率が高くて人件費負担が小さい」その状態を維持しながら事業を大きくすることができれば、それが最も潰れにくい会社ということになる。

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