廃タイヤをリサイクルした3Dプリントタイヤの開発
これまでの製造業は、原料→生産→消費→廃棄というプロセスで、大量生産から大量廃棄までが、直線上の一方通行で行われてきため「リニアエコノミー」と呼ばれている。しかし、耐用年数を経過した製品は廃棄されるところで経済活動は終わるため、最終的には資源の枯渇や環境汚染の問題が生じてくる。
資源価格の高騰に加えて、廃棄物に対する規制は年々厳しくなっており、廃棄物処理の価格も、1980年代と比較すると約2倍に上昇している。そのため、製品の廃棄を最終ゴールとしたリニア経済は2030年頃までには存続できなくなるとみられ、その経済圏で事業活動をしてきた大半の企業は、サーキュラーエコノミーへの転換を急ぐ必要がある。
サーキュラーエコノミーのゴールは、「原料→生産→販売→回収→リサイクル→新たな原料→生産→販売」という循環サイクルを作り、継続的な利益を得られる仕組みを作ることにある。そこでは、新たなリサイクル技術や、寿命を飛躍的に延ばせる新製品の開発がビジネスチャンスになっている。
具体例として、自動車のタイヤは世界で毎年10億本が耐用年数を終えて処分されている。廃タイヤのリサイクル率は90%以上で、その数字からはリサイクルが成功しているように見えるが、リサイクル用途の約6割は、石油や石炭の代替燃料として工場などで燃やされているため、逆に環境を悪化させているという指摘もある。
この解決策として、タイヤメーカーのミシュランでは、廃タイヤからリサイクルしたゴム粉末を原料とした3Dプリントタイヤを実用化させることで、サーキュラー企業への転換を目指している。
同社が開発を進めて、2024年頃の実用化を目指す3Dプリントタイヤの「Uptis」は、空気を使わずに等間隔のゴムスポークによってトレッド面を支える構造になっている。そのためパンクの心配がなく、鉄やアルミのホイールを使わないため、乗り心地や静粛性も高いのが特徴である。さらに、3Dプリントタイヤは走行する路面の状況に応じて、トレッド面の溝をカスタマイズして出力することができるため、販売店に3Dプリンターを設置すれば、在庫を持たずにユーザーのニーズに合ったタイヤをオンデマンドで販売できるようになる。
■ミシュラン Uptis
■Uptisタイヤのデモ映像
3Dプリントによるエアレスタイヤの開発は、グッドイヤーやブリジストンでも進めており、原料としてゴムに樹脂素材などを加えて、タイヤの耐久性を高める研究もされている。バスやトラックが自動運転で運行されるようになると、パンクによる重大事故を避けるため、「絶対にパンクしないタイヤ」へのニーズが高まり、そう遠くない未来にタイヤ業界の変革が起きることも予測されている。
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・タイヤ業界にみるサーキュラービジネスの転換例
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