JNEWS会員配信日 2015/8/11
原油価格の下落は、世界経済の中でも注目すべきトピックスであり、2014年前半までは1バレルあたり 100ドル台で推移していたのが、2015年7月には50ドルを切るところまで暴落している。その理由には複合的な要因が絡んでいるが、米国から起きたシェールガス革命により、エネルギーの需給バランスが崩れたことが大きいと見られている。
シェールガスは、従来のガス田よりも深くて小規模な頁岩(けつがん=シェール)層から採取できる天然ガスで、地下の数千メートルまで垂直に掘削し、そこからさらに水平に数千メートル掘り進める技術と、そこへ高圧の海水などを注入して、周囲の岩を破砕してガスを採取する技術(水圧破砕法)が実用化されてきたことで、2000年頃から生産量が飛躍的に伸びてきた。
これにより、化石燃料の寿命は400年先まで伸びたという説もある。試算の上で、米国は化石燃料の調達を他国の頼らずに、自給自足することも可能となり、原油輸入量も2005年頃をピークにして、年々減少してきている。
2030年までには、シェールガスは米国の総ガス生産量の46%を占めるという予測もあるが、その一方で、シェールガスの問題点も指摘されてきている。
一つは、シェールガスの埋蔵量は正確に把握することが難しく、掘削にかかる初期投資を回収できるかが不透明という問題。1ヶ所のシェール井戸を掘るには、1000万ドル前後(約12億円)のコストがかかるが、数年で枯渇してしまう井戸が大半であり、新しいポイントへ乗り換えていく必要がある。しかし、原油相場が下落すると、当初の採算計画に狂いが生じて、投資のサイクルが循環しなくなってしまう。
もう一つ指摘されているのは、環境汚染の問題だ。当初は、シェールガスは環境を汚染しないと言われていたが、最近の調査では、温室効果ガスの削減につながらないことや、掘削の際に使用する薬剤に有害物質が含まれていて、それが土壌や地下水の汚染を引き起こす懸念があることがわかってきた。
米シェールガス開発の状況や、掘削による環境汚染の問題については、マット・デイモン主演の映画「プロミスト・ランド」の中でも詳しく描かれている。
それでも、シェールガスが引き金となり、原油価格の相場が下落することは、製造業や小売業の原価コストを下げることに繋がり、プラスの要因とみられている。
では、太陽光発電を中心とした、クリーンエネルギービジネスへの影響はどうなるのか?
シェールガスも化石燃料であることに変わりなく、エネルギー不足を緩和する“つなぎ役”としての期待は大きいが、将来的にはクリーンエネルギーへの移行が求められる方向性は変わらない。ただし、原油価格の下落が新エネルギー事業への計画に狂いを生じさせているのも事実だろう。
有害物質を排出しないクリーンエネルギーは、各種の技術が開発途上にあるため、化石燃料と比べるとコスト高になってしまう。そのため、各国の政府や投資家の支援が不可欠であり、クリーンエネルギーの中でも、どの分野に資金が流れているのかを見ることで、今後の成長市場を把握することができる。(この内容はJNEWS会員レポートの一部です)
■JNEWS会員レポートの主な項目
●クリーンエネルギーの成長軌道と問題点
●投資利回りからみた太陽光発電ビジネス
●ソーラー発電副業者の収益モデルについて
●住宅向け蓄電池の普及に向けた補助金動向
●自動車との共有が進む蓄電池ビジネス
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