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エコとエイリを共存させた 循環型ビジネスモデルの再構築 |
written in 2009/10/23
“古着”と言われて「他人が着ていた服なんて」と抵抗感を示すのは、中高年の世代だろう。しかしユニクロなら新品のシャツやジーンズが1000円で買えるようになった今では、誰もが同じ恰好をしていて、自分の個性を表現する機会が少なくなってしまった。そうかといって、有名百貨店で売られている服は高価で、不況が続く昨今ではなかなか手が届かない存在になってしまっている。
そこで若者達に人気なのが「古着」の存在で、米国や欧州から輸入された服ならデザインが良いし、一品モノのため他人とカブることがなく、リーズナブルながらも、お洒落を楽しむことができる。有名ブランドのビンテージ古着が人気化したのは90年代後半のことだが、現在では数百円〜数千円で買える安価な古着のほうが主流である。
お金は無くても、それなりに楽しいライフスタイルを考案できるのは若者の才能だが、彼らの価値観からは新サービスのヒントをたくさん見つけることができる。自動車をレンタルするカーシェアリングも、彼らにとってはCDやDVDをレンタルするのと同じ感覚で捉えているし、知らない者同士が家賃を割り勘にしたルームシェアによる共同生活も増えている。
《年代別にみた平均所得の状況》
20代と30代以降で、所得に格差があるのは当然だが、中高年の年収が 700万円以上でも、20代の若者よりも暮らしぶりが楽というわけでもない。家族一人あたりの所得でみれば、どの世代も一人 200万円前後という水準で、月額なら16万円の範囲で衣食住のやり繰りと貯蓄をして、残りの余裕の出た範囲で趣味や娯楽を楽しまなくてはならない。
その意味で中高年の世代も、若者が合理的な節約をしながらも生活を楽しもうとするライフスタイルからは見習うべき点があるし、そこに新ビジネスの芽が潜んでいる。リサイクルショップやネットオークションで中古品を購入することは、世代を問わず慣れてきたが、さらに欧米の若者達から流行しはじめているのが、“バーター”や“スワッピングサービス”と呼ばれる、金銭を介さない物々交換の取引である。
バータービジネスについては、バックナンバーでも何度が取り上げているが、その後の動きとして、使わない物(資源)は手元に残さずに循環させるという発想のエコサービスや、非営利によるソーシャルサービスとしてのすそ野を広げている。これは、企業が意識しなくてはいけない「サスティナブル(sustainable)=資源を循環、持続させられる社会」というキーワードとも合致しており、モノを個々の客に売るだけでなくて、家庭で不要になった商品を買い取ったり、客から客への譲渡を仲介するようなことまでを、企業の社会責任として担当しなくてはいけない。
もちろん企業は営利の活動をするのが目的だから、それをすべてボランティアで行なうのではなくて、最終的には収益に繋がるような落としどころが欲しい。今回はスワッピングサービスの動向を掘り下げる中で、そのビジネスモデルがどのように構築されているのかを見ていこう。
(環境ビジネス・エコビジネス事例集一覧へ)
●マイカーを交換する広告型スワッピングモデル
●スワッピングによるマイカーの買い換え方法
●広告型によるマイカー交換の流れ
●リース車を専門にスワッピングするサービス
●洋服の交換サービスは実現可能なのか?
●エコとエイリを共存させた循環型ビジネスモデルの再構築
●古本屋よりも賢い、書籍のスワッピングサービス
●古本交換サイトの仕組みとオンランオンライン蔵書リスト
●ビデオレンタル店と比較するレンタルブックサービスの採算性
●新たな商売センスで成長する古着屋経営から学ぶ小売業の本質
JNEWS LETTER 2009.10.23
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■この記事に関連したバックナンバー
●通貨価値が目減りするインフレ時代に伸びる物々交換取引
●お金を使わずに"わらしべ長者"を目指すバーターショップ
●マークは違っても中身は同じガソリン業界のバーター取引
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●DVDレンタルから派生したマイカーを持たないライフスタイル
●モノを売ることから転換する脱物質化ビジネスモデルの胎動
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