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高齢者を固定客にする訪問理美容サービスの収益構造

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JNEWS会員配信日 2019/11/8

 全国には美容室と理容室を合わせて、約36万件の店舗がある。近年では男性も美容室に行くため、美容室の数は20年前と比べて1.2倍に増加しているが、廃業・倒産率も高いのが特徴である。特に好立地で洒落た店舗を構えて、傍目からは成功しているように見える美容室ほど、経営は厳しさを増している。

2017年に倒産した「HAIR DIMENSION(ヘアーディメンション)」は、芸能人や著名人の常連客が多く、カリスマ美容師ブームの火付け役としても有名な美容室だったが、客単価の高いことが逆に足かせとなり、景気の低迷や人気スタイリストの独立などで人気に陰りが出始めてからは、来店客数の減少→売上の低下が加速していった。

美容室が経営不振に陥りやすい要因には、店舗の家賃が高いこと、高額の広告宣伝費を投じて集客していること、多くのスタッフを抱えて人件費の負担が重いこと、さらに美容サービスの客単価も10年前と比べて2割近く下がっていることが挙げられる。

《美容サービスの1世帯あたり年間支出額》

しかし、髪は自然と伸びていくため、美容室や理容室の需要自体が無くなってしまうことはない。もともと理美容サービスで使う材料や消耗品などの原価率は、売上に対して10%前後と低いため、美容師か理容師の国家資格があり、自宅を店舗としている個人事業の形態であれば、1日に数名の来店客でも経営は成り立つのが、この商売の利点である。

厚生労働省の統計では、個人経営の理美容店は、1日の来店客数が平日は平均10名、土日は15名となっているが、1日の来店が5名以下でも存続している個人店舗は沢山ある。

そうした理美容業の原点に立ち戻りながら、新たな顧客を増やしていくルートとしては、高齢者の介護市場が注目されている。理美容業の法律では、衛生面の問題から、店舗以外での施術サービスは禁止されている。ただし、体が不自由な高齢者については、自分で店に行くことができないため、訪問理美容サービスは特別に認められているのだ。

これまでは、介護施設などへの訪問理美容サービスは、ボランティアとして行われるケースが多かったが、2018年の時点で65歳以上の人口は国民の28.1%(女性は31.0%)、75歳以上は14.2%(女性は16.8%)となる中、高齢者の理美容サービスは魅力的な市場となり、企業として参入するケースも増えてきている。10分1000円カット」の格安料金で全国展開する「QBハウス」でも、介護施設や病院を対象とした訪問理美容サービスを手掛けている。(訪問理美容の料金は10分1000円とは別体系)

QBハウスの訪問理美容

要介護者向けの訪問理美容サービスは、保健所への届出で比較的容易に開業することが可能だが、企業として参入する場合は、理容師・美容師の人材を新たに確保する必要がある。不定期の日時に現場へ出張して施術を行うため、フルタイムの勤務ではなく、副業者やフリーランスも求人の対象になっている。

全国には理容師の有資格者が60万人、美容師の有資格者が123万人いるが、その中の4割にあたる約72万人は、関連の仕事に就いていない休眠資格者とみられている。それらの休眠者は、訪問理美容を手掛ける企業にとって格好の人材である。

しかし、理容師や美容師の立場では、時給ベースの報酬額で働くよりも、個人で起業したほうが収入とワークスタイルの自由度は高い。そのため、高齢者専用の理美容師として無店舗で開業するケースは、全国的に増えてきている。今回のレポートでは、訪問理美容を事例とした、高齢者市場への参入方法と、他分野でも成長が見込める介護保険外サービスのテーマについても紹介してみたい。

《理容士・美容師の有資格者数》

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・規制緩和される出張理美容の適用範囲
・訪問理美容サービスの収益構造と事業形態
・訪問理美容の個人開業モデル
・個人宅向け訪問理美容サービスの集客と採算
・保険外サービスとして参入する高齢者市場
・患者と家族のコミュニティを築く認知症カフェ
・飲食店が開発する高齢者カフェの業態
・高齢者「出かける場所」ニーズの提供ビジネス
・健康数値で報酬が支払われる成果連動型ヘルスケア
・介護業界向け人材紹介ビジネスと外国人介護士の規制緩和

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