国内のスモールビジネスM&Aでは医療クリニックの売買案件が多い。公的保険による収入源が安定している一方で、院長が高齢で後継者が不在の割合は、個人開業医の8割以上となっていることから、M&Aの仲介が成り立ちやすくなっている。
医療クリニックの売買価値とM&A仲介ビジネス

JNEWS会員配信日 2017/8/27


 事業買収というと、グーグルやソフトバンクが手掛ける数百億円から数千億円規模の派手な事例が話題になるが、取引額が数千万円台のスモールビジネス売買は活発になってきている。

国内では、個人開業のクリニック(診療所)が、高齢(70歳代以降)になった院長の後継者がいないために廃業するしかない、という話が増えている。しかし、地域で長年診療を続けてきたクリニックには、定期的に通院する患者が付いており、閉院はその人達に迷惑をかけることになってしまう。

一方、病院に勤務する30~40代の若い医師の中では、開業希望者も多く、両者のマッチングをすることで、クリニックのM&Aが成立する。この市場は「医療継承」というカテゴリーで仲介ビジネスが急成長している。帝国データバンクの調査によれば、後継者不在の診療所は全体の8~9割にもなるため、第三者への医療継承を仲介する市場は大きい。

開業希望の医師が、廃業予定のクリニックを購入する利点は、ゼロから開業するよりも資金をかけずに、それまでの通院患者を引き継げることである。平均的なクリニックでは、毎月延べ 1,000人前後の通院患者を抱えているため、院長が代わり、診療スタイルの違いなどで離れていく患者が一定数あることを折り込んでも、引き継いだ初年度から黒字化できる可能性が高くなる。


クリニックの売買金額(営業権の譲渡価格)は、月間の売上高から人件費、家賃、医療機器のリース代などの経費を差し引いた利益と、借入金の有無などにより算定、交渉されるが、個人事業のクリニックでは、譲渡価格が1,000万~2,000万円で取引されるケースが多い。開業医というと非常に儲かるイメージがあるが、実利益から算定される価値はべらぼうに高いわけではない。

言い換えると、医療クリニックに限らず、これからはM&Aの仲介市場が整備されてビジネスは流動性が高くなり、売買価値が高くなる構造にしていく発想が、結果として業績の向上に結び付く。高値が付くビジネスの特徴がどこにあるのかを理解することは、ゼロから起業テーマを探す人にとっても、有望な業種やビジネスモデルを見つけるためのヒントになる。

【医療クリニックの売買価値】

 日本国内のスモールビジネスで、売買市場が活発化している業種の筆頭は、医療や介護のカテゴリーになる。いずれも公的保険による報酬制度で収益基盤が安定しているため、オーナーが代わっても売上や固定客を引き継ぎやすいことが理由だ。

最近は、医療法人が複数のクリニックを分院展開することで、スタッフの採用を効率化させたり、医療機器や薬剤の購入コストを下げる経営手法が確立してきたことから、院長が高齢の診療所を買収して系列化する動きも加速している。それに伴い、会計事務所などが母体となった、第三者への医療継承を仲介サービスが全国的に広がっている。

クリニックの譲渡価格は、売上高(医業収入)から経費を差し引いた利益の実績をベースに交渉されることになるが、これは院長の年間所得に相当する。つまり「院長年収の何年分か」をみると、案件の優劣をおおよそ判別できる。

院長年収の1年分に相当する「1,000~2,000万円」で売りに出ている案件は、現院長が70代後半で高齢のため、既に患者数が減少して、院内の設備も老朽化しているケースが多い。その点からすると、第三者への医療継承は、院長の気力、体力が充実して経営状況が良好なうちにハッピーリタイアをしたほうが譲渡金額は高くなる。院長年収が3,000万円、その3年分なら「9,000万円」が営業権の譲渡金額だ。

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