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  米国のカーシェアリング事業は、安全に対する法規制が厳しくなってきたことで、採算性が悪化してきている。またカーシェアの利用者は、マイカーオーナーに比べると、事故率が高いことも保険会社から指摘されている。
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安全コストを意識したカーシェアリング事業の
採算と転換期
written in 2012/4/10

 自動車を個人で所有するのではなくて、複数の人達が共有する「カーシェアリング」は世界で注目されるようになったが、その仕組みが最初に考案されたのは1970年代のスイスと言われている。日本でも2005年頃からサービスを提供する業者が出始めて、存在は広く知られるようになってきた。

交通エコロジー・モビリティ財団の調査によると、2012年1月の時点で、日本国内にあるカーシェアリングのステーション数は4,268ヶ所(前年比1.5倍)、車両台数は6,477台(同1.7倍)、会員数は167,745人(同2.3倍)となっている。

《国内カーシェアリング普及の推移》

  

2005年からの7年間で利用者が10倍に伸びているのは特筆に値するが、現在のマイカー保有台数が「5800万台」であることからすると、カーシェアリングの普及率は 0.1%程度に過ぎない。しかし、これから何十年か先には、マイカー・オーナーよりもカーシェアリング利用者のほうが上回るのかといえば、そうでもないという見通しが立ち始めている。

カーシェアリング先進国であるスイスでも、実際の利用者は人口に対して 1.3%という程度で、マイカー市場を駆逐するような状況にはなっていない。逆にマイカー所有者の総数が伸びることにより、その数パーセントが連動してカーシェアリング市場も成長していくような関係になりそうだ。

《世界のカーシェアリング普及率(2011年調査)》

  

カーシェアリングを営利のビジネスにしようとする動きが進んでいるのは米国で、業界最大手「Zipcar(ジップカー)」では、主な大都市(17ヶ所)の他、カナダ、英国、スペインにも進出して67万人の会員を獲得している。ただし、その中には、大学キャンパスとの団体契約によるメンバーシップも含まれるため、実際の利用者数とは異なっている。

同社は、およそ60人の会員で1台の車両を共有(共同利用)することを前提に、車両や設備への投資をしており、2011年には 400万件の予約数があったが、車両のリース料金、駐車料金、ガソリン代、税金、メンテナンス代などの負担は重いため、事業の損益としては赤字の状態が続いている。



カーシェアリング事業の採算を不透明にしている要因は、主に2つある。一つはシェアしている車両価値の下落を予測する部分で、Zipcarは新車をリース契約によって調達した後、約2.5年の使用期間を経過した時点で、次の新車に入れ替える計画だ。その時の“中古車としての価値”がいくらなのかは、車両の使用状況や中古市場の相場によっても変動するため、シェアリング期間を通した収支が読みにくい。

もう一つは、「安全」にかかるコストをどこまで負担するのかという問題だ。クルマの整備不良は、ドライバーや同乗者の命に関わるため、充分すぎる位のメンテナンスを維持することは欠かせない。さらに、利用会員が事故を起こした時に備えた保険契約は不可欠だが、最近では保険会社側が、カーシェアリング車両の加入に難色を示し始めている。

カーシェアリングの歴史は、まだ10年にも満たないため、利用実績が蓄積される中で、当初は想定していなかったトラブルや問題点が露呈してきたという状況。これは自動車に限らず、他のモノをシェアリングしようとする事業にも共通する部分が少なからずあり、これから本当のシェアリング文化を普及させていく上では、解決すべき課題が多数あることがわかってきた。それが具体的に何なのかを解説しながら、シェアリングのビジネスモデルを再考してみたい。

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この記事の核となる項目
 ●安全コストが重荷になる米カーシェアリング業界
 ●米政府によるカーシェアリングへの規制動向
 ●個人間カーシェアリングのリスクと保険会社の対応
 ●自転車シェアリング事業の採算性と問題点
 ●自治体との提携による自転車シェアリング事業
 ●リスクを軽減した個人間シェアリングの仲介プラットフォーム
 ●知識やスキルをシェアリングするプラットフォーム
 ●保育園の代わりとなる育児のシェアリングサービス
 ●ベビーシッター・エクスチェンジの仕組みについて
 ●近隣コミュニティによる育児や家事のシェアリングモデル
 ●ローコスト旅行を支援する宿泊施設の新業態と新たな大家業
 ●ルイ・ヴィトンは買わずに借りる時代の新ステイタスと資産形成
 ●安い家賃で優雅に暮らすルームシェア・ゲストハウスの台頭
 ●脱マイカー社会で変わる消費者の購買行動と商圏法則


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