新鮮なフルーツをドリンクとして飲めるフレッシュジュースバーの経営は、仕入と食材ロス率の管理によって採算が決まる。同じノウハウは、フードロス対策が求められるようになった飲食ビジネス全体に求められるようになっているJNEWSについて
食材ロス率から判断するフレッシュジュースバー経営の採算

JNEWS
JNEWS会員配信日 2006/8/1
記事加筆 2019/8/5

 「フレッシュジュースバー」という業態のドリンクバーがある。これは新鮮な果実や野菜をミキサーにかけて飲みやすい味付けを加えて立ち飲み方式で販売するスタイルの店のことを指していて、デパ地下などに出店しているのをよくみかける。1杯あたりの価格は3百~5百円と割高だが、野菜不足の現代人にとっては“カラダに良い”ということで、通勤途中に立ち寄る人も少なくない。

フレッシュジュースバーには、大手の飲食チェーンが何社も参入している他、個人の独立開業テーマとしても人気が高い。しかし開業後の状況を見てみると、短期で廃業する確率が他の飲食サービスと比較して高いという傾向がみられる。
1杯あたりの単価は高いため、客が行列として並んでくれれば儲かる商売であるが、ネックとなるのが、その日のうちに使えなかった原材料を廃棄するロス率の高さだ。「新鮮」という付加価値を前面に打ち出すフレッシュジュースバーでは、逆に仕入れた原材料の鮮度が低下する足の早さが命取りになりかねない難易度の高い商売である。

飲食店の経営では、一般に売価の約3割が食材の原価率として妥当とよく言われるが、実際に店を開店させてみると原価率3割の見込みが5割程度になってしまうということがよくある。食材は端から端まですべて使えるわけではないし、来店客の数が事前の予想よりも少なければ、翌日に残せない食材は廃棄してしまうしかない。そこで飲食店経営者は様々な工夫をして食材の廃棄ロスを削減するための工夫をしている。

【食材ロス率からみた飲食店経営の難易度】

 飲食店が仕入れた食材を無駄にするロス率は平均で約5%といわれるが、そこには食材の種類や店の経営方針によって大きな差が生じている。食材を大切に使うという点からいえば、できるだけ無駄が生じない努力をすることが大切だが、店の経営としては必ずしもそれが正しいとは限らない。

新鮮さをウリにするフレッシュジュースバーの例でいえば、当日に仕込んだフルーツを翌日に持ち越して使うことを顧客は望んでいない。また繁盛している食堂では顧客が食べ残す量が多いが、これはわざと店側が食べ切れない量を設定しているためである。客がすべて完食できる程度の分量にしたほうが、料理の原価率が低く抑えられることはわかっていても、それでは客のほうが物足りなさを感じてしまう心理を把握した上でのこと。個人経営の飲食店が良心的な経営を行おうとすれば、どうしてもロス率が高くなってしまう。

食材の廃棄率でいえば、高級店ほど高くなる傾向がある。その典型といえるのが寿司屋で、客単価が1万円を超えるような高級寿司店では仕入当日に使い切れなかった食材を翌日使わないケースが多く、ロス率はかなり高くなり、その分が高い料金に反映されている。

一方、チェーン展開する100円均一の回転寿司の場合には、ロス率を5%以内に抑える企業努力をしているが、それが実現できている背景には物流の効率化と冷凍技術にある。回転寿司のレーンを流れている寿司ネタは、世界各地で水揚げされた魚を日本の水産業者が輸入し、それを工場で寿司種として加工、冷凍保存した後に、契約先の回転寿司チェーンまで配送するという流れになっていることが多い。

《100円寿司の食材流通ルート(例)》

【人気バイキングメニューの裏側】

 大人1,500円、子供800円といった定額料金で、好きなだけ食べられるバイキングメニューは消費者から好評だが、飲食店の経営面からみるとバイキングは食材のロスを削減する調整弁の役割を果たしている。従来の飲食店メニューは、リストの中から顧客に食べたい料理を選んでもらい、それを調理するために、メニューの品揃えが多くなるほど事前に用意しておく食材のロス率が高くなるという悩みを抱えていた。

しかしバイキング方式では「食べ放題」という特典を顧客に与える代わりに、店側が都合の良い料理を大皿で並べて自由に取ってもらうスタイルのため、食材のロスとスタッフの人件費が大幅に軽減される。しかも食べ放題には時間制限を設定しているため、ピークの時間帯でも客席を効果的に回転させることができる。売上は定額料金×来店客数によって算出できるため、料理の原価率も管理しやすい。

客単価(定額料金)が1,500円で原価率を 40%に設定するのであれば、食材にかけられるコストは一人あたり 600円ということになる。その条件で調理できる料理を数種類用意して大皿で提供すればよいというわけだ。ランチタイムのみをバイキング方式にしているレストランの場合には、前日のディナータイムで無駄が生じた食材の調整弁としてバイキングを上手に活用している。

複数の業態の飲食店を経営する外食企業でも、その中の一つの業態としてバイキングレストランを出店していることが多いが、これも同じ理由によるものである。

【フレッシュジュースバー経営の採算性】

 飲食業における食材ロスの負担を理解すると、フレッシュジュースバーの経営を軌道に乗せるには、原材料の仕入ノウハウが重要になることがわかる。
人気店となっているジュースバーの中には、果物屋が副業として行っているものもある。もともと果物の仕入れノウハウを持つ業者が、そこに隣接した事業としてジュースバーを経営するのであれば、素人が独立開業するよりも失敗の確率は低くなる。

誤解しがちなのは、果物屋が経営するジュースバーでは売れ残って痛んだ果物をジュースにしているのではないか?ということだが、実際にはジュースの原料用と生果用とでは、仕入れの種類が異なっているため、必ずしもそういうことではない。しかし新鮮な果物を安く仕入れるというノウハウに関しては、共通している。また大手の外食企業がジュースバーに参入する際には、冷凍果物を原材料に使うなどしてロスの軽減を図っていることもある。

もう一つ、ジュースバーの経営で難しいのは出店コストの高さだ。鮮度が命の商材はできるだけ行列ができるような立地に店があることが望ましい。さらに立ち飲みのスタイルが似合う場所となると、百貨店や大型ショッピングモールなどが最も適した場所といえるが、これらの商業施設に出店するためには営業保証金+固定家賃+歩合制のテナント料を支払わなくてはならない。人気のある商業施設ならば十坪程度の店でも営業保証金と、店内の設備費用を加えれば、開業資金として2千万円以上は必要になる。そのため当初の売上予測が外れて客足が伸び悩んでしまうと、店を維持していくことができずに早期撤退の憂き目をみることになる。

飲食業にとって、鮮度が高い食材の仕入れ、売れ残りのロス率、集客力のある立地選定はバランス感覚が難しい。まだ経験の浅い独立起業者が、鮮度の高さをウリにした業態店舗にチャレンジすることには、リスクが伴うのも事実である。(この内容はJNEWS会員レポートの一部です。正式会員の登録をすることで詳細レポートにアクセスすることができます記事一覧 / JNEWSについて

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