中古車業界は「買取専門店」と「オークション代行業者」の台頭によって、流通相場が大きく崩れている。仕入れた中古車を丁寧に整備して売るのではなく、一定の利益を上乗せするだけで転売するフィービジネスへと変化している(JNEWSについてトップページ
中古車オークション代行業にみる新たなフィービジネス

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JNEWS会員配信日 2005/9/23


 中古車業界では「買取専門店」という業態が登場して、ディーラーに下取りに出すよりも高く買取ってくれるサービスが定着した。買取専門店ではディーラーの査定価格よりも高い価格で顧客から車を買取り、業者オークションで現金化することでそのマージンを稼いでいる。この業界では「業者専用オークション」という車の売却ルートが確立しているため、事故歴のない車であれば買取った在庫車を現金化できないということはまずない。そのため、車の査定能力と買取資金さえ確保できれば、買取専門店はそれほど難しい商売ではない。

例えば、2003年式クラウンアスリート(新車価格 426万)のディーラー下取り価格は約290万円だが、業者オークションでの取引相場は約320万円と差がある。そこで買取専門店ではディラー査定より10万円高い 300万円で顧客(個人)から車を買取れば、オークションに出品することで20万円の差益を稼ぐことができる。
オークションでその車を仕入れた中古車業者は約30万円の粗利を乗せた 350万円のプライスカードを付けて店頭販売する。このように中古車業界では、一台の車に対して何通りもの“値付け”がされて末端のユーザーへと流通していく。その中で中古車取引の基準値となるのは、業者オークションにおける取引相場である。

《2003年式クラウンアスリートの商品価値(2005年9月)》

《中古車の流通ルート》

この流通ルートを把握して、賢明な消費者が少しでも安く中古車を購入したいと考えれば、オークション会場から直接落札することが得だと気付くはずだ。そこで顧客からの注文に応じて希望の出品車を落札する「オークション代行業者」が存在している。彼らは店舗や在庫を持たずに、業者オークションへの参加のみで商売をするため、既存の中古車業者からは疎まれてきたが、最近ではユーザーからのオーダーが急速に増えて、新たな業態として確立しつつある。

【中古車オークション代行の仕組みと利点】

 オークション代行業者が従来の中古車販売店と異なるのは、店舗や展示車両の有無の他に、仕入れ価格(オークション落札価格)を開示している点にある。仕入れルートは両者共に業者オークション経由ということになるが、中古車店では落札価格に対して25~35万円程度の粗利を上乗せして店頭販売するのが普通だ。
中古車取引は相場によって変動するため、運良く安値で落札できれば、店側の儲け(販売価格-仕入価格)はそれだけ厚くなる。

それに対してオークション代行業者は、顧客から希望する車種、グレード、色、オプションの有無、購入予算額を事前に聞いておいてから、その条件に合う車を全国のオークション会場の出品リストから探して落札をする。落札額の明細は顧客に開示されるため、当初の購入予算額が200万円でも、180万円で希望の車が手に入ることもある。オークション代行業者は落札額に対して3~5%の手数料を顧客から受け取る仕組みだ。

近頃では中古車オークションの会場が全国各地に増えて、月に20万台以上の車がオークション市場で流通しているため、顧客が希望する車のほとんどは1週間~1ヶ月程度で探すことが可能だ。従来の中古車店よりもどれだけ安く買えるのかは車種によっても異なるが、ベンツやBMWなどの輸入車になるとオークション代行のほうが 100万円近く安く買えることもある。そのため車好きな人ほど、オークション代行を利用するケースが増えている。

ただしオークション代行で安い買い物をするためには相応のリスクがある。まず第一に、顧客は現車を自分で確認せずに購入(落札)しなくてはならない。次に購入後の保証の問題もある。中古車店では3ヶ月~1年程度の保証を付けて販売するのが普通だが、オークション代行では、購入後に故障が見つかれば実費で修理するのが基本だ。

しかし、オークション会場で公開される出品票から車両状態は詳しくわかる他、落札前には現車の下見も依頼できることから、それなりの実績を積んだオークション代行業者であれば“悪い車”を掴まないアドバイスを適切にしてもらえる。
また購入後の修理についても、純正ディーラーに持ち込んで整備を依頼することで解決することが多い。車に対してある程度の知識と理解を持っている人であれば、オークション代行による愛車探しは、数百万台の流通在庫から理想の一台を探し出す楽しさと、安い買い物ができる金銭的なメリットによって、実際に利用した人の満足度は高い様子だ。

【ストックビジネスからフィービジネスへ転換する中古車業界】

 今のところオークション代行業は個人事業、もしくは数名規模のスモール企業として行われていることが多い。3~5%の手数料を収益源としているため、100万円の車を落札すれば5%で5万円の収入ということになる。中古車店の平均粗利が1台あたり25~35万円であることと比較するとかなり低い利幅になるが、店舗や在庫を持たずにローコスト経営を徹することで商売を回転させている。

肝心の集客に関しては、やはりインターネットが主力となる。ホームページを立ち上げてオークション代行に関する情報提供をすることで月に10~20人(台)の顧客を獲得することも可能だ。しかしネットでは全国各地からの問い合わせや依頼が集まるため、顧客との打ち合わせはメールと電話、落札した車の諸手続き(名義変更や車庫証明)や引き渡しについても、従来の自動車販売とは異なるノウハウが必要になってくる。

顧客側にしてみれば、オークション代行の利用には不安や心配はあるものの、従来の買い方よりも、状態の良い車を安く買いたいという希望を持つ先進的な自動車愛好者を中心に利用者が増えていて、これはまさに「自動車の通信販売」といえるものだ。

中古車業界では、これまではオークション代行の存在を軽視してきたが、ユーザー側の支持率が上昇していることを受けて、新たな中古車販売の手法として見直す風潮が高まっている。ネットで検索をすれば素人でも中古車の取引相場が簡単にわかってしまう時代には、業者は下手に消費者を欺くことができない。ならば、仕入価格(卸市場での落札価格)を透明に公開して、適正な手数料を徴収するほうが理に適っているのかもしれない。これは中古車業界のビジネスモデルがストックビジネスからフィービジネスへと転換することを意味している。

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