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プライベートバンク市場を奪う投資ロボアプリの影響力

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JNEWS会員配信日 2023/4/3

 資産を安全に管理するには、複数の金融機関に資金を分散させるのが最善策といえるが、多額の資産を持つ富裕層が資金を細分化するのは手間がかかるし、その上で高利回りの運用をすることは難しい。

そこで、富裕層向けの資産管理を代行するのがプライベートバンク(PB)の役割で、海外では最低でも500万~1000万ドル(6.5~13億円)の預託ができる資産家のみを顧客対象として、資産運用を代行している。世界では、プライベートバンク全体の預かり資産額が約7兆ドル(約910兆円)と言われており、日本国内の大手と地方銀行を含めた主要銀行の総預金額(約870兆円)よりも規模が大きい。

その中、クレディ・スイスは2021年末の時点で1.6兆スイスフラン(約232兆円)の資産を運用していた。しかし近年では、ブルガリア麻薬組織のマネーロンダリングに関与して有罪の判決を受けたり、ヘッジファンドとの取引で44億スイスフラン(約5200億円)の巨額損失を出したりと、不祥事が続いていた。スイスの金融監視局は、クレディ・スイスが100以上の危険な取引をしていたことを発見して、調査を進めている。

こうした問題は、プライベートバンクが顧客と投資一任契約を結ぶため、資金の運用方法について、いちいち顧客の承諾を得る必要がなく、担当者の裁量によって投資が行えることが関係している。クレディ・スイスに年間2500万スイスフラン(約36億円)もの利益をもたらしていた東欧顧客のケースでは、知らないうちにリスクの高い投資商品を買わされており、報告義務のある文書も偽造されていた。

様々な不祥事が発覚したことにより、クレディ・スイスからは顧客が急速に離れており、2022年10月には129億スイスフラン(約1.8兆円)もの資金流失が起きた。
これは、クレディ・スイスに限った話ではなく、他のプライベートバンクにも飛び火していく可能性がある。

【新富裕層向けウェルスマネジメント】

 プライベートバンクの歴史は、19世紀から20世紀前半の戦時中に資産没収を恐れた欧州の富裕層が、スイスの銀行に資金を移したことが起源と言われている。
そこから何世代にも渡って裕福な一族の資産管理をしてきたが、現代では高額の金融資産でもデジタルで一元管理できるようになったことから、プライベートバンクの役割にも陰りが出てきている。

特に、若い富裕層の中では、資産運用を任せるのではなく、自分で管理するスタイルが好まれるようになっている。そのため、古い体質のプライベートバンク市場の中で、新興のFintech企業がデジタル革命を起こせるチャンスは大きいと言われている。具体的なサービスとして、自分の保有資産状況とリスク容認レベルに合わせて複数の預金口座や投信信託などに自動投資ができるアプリが急成長している。

米国で2008年に立ち上げられた「Wealthfront(ウェルスフロント)」は自動投資アプリ(ロボット投資)の先駆け的な存在で、現在では56万人超の投資家に利用されている。このアプリは、高金利の預金口座を提供している複数の銀行と提携しており、現在の金利水準では年率4.3%のレートで最大300万ドル(約4億円)まで、公的保証の範囲内で預金をすることができる。

Wealthfront

《複数銀行と提携した高金利預金》

この預金を資産形成のベースとした上で、さらに高利回りを目指すユーザーに対しては、リスクレベルに合わせた各種の投資信託に自動投資ができるようにしている。

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