返品率上昇で見直されるディスカウントストアー業態
全米小売業協会(NRF)のレポートによると、2022年の小売業返品率(売上に対する返品額)は16.5%にもなり、米国の小売業界は売上10億ドルに対して 1億6500万ドルの返品を受け入れている。店舗とオンライン販売の返品率には差がないが、これは、小売店舗でもECサイトに倣って、返品ポリシーを緩和しているためだ。
その中では、返品ポリシーを悪用して、外出用に新品の服を1度着用した後に返品したり、購入後にそれよりも安い商品が見つかれば買い直して返品するなど、不正返品の割合が1割近くある。ホリデーシーズンの返品率は上昇する傾向があるが、これはセールの早い時期に商品を購入したものの、それよりも大幅割引されているショップを見つけて、買い直し後に元の商品を返品するためと分析されている。
■2022 Consumer Returns in the Retail Industry
これら返品商品が膨れ上がっている状況から、米国では大手小売企業から放出された余剰在庫を買い取り、激安販売するディスカウントストアーが業績を伸ばしてきている。
ミシシッピー州を中心とした米国南東部で100店舗以上を展開する Dirt Cheap(ダートチープ)はその中の1社で、有名ブランド品の他、ウォルマートやターゲットなど、大手ストアチェーンのプライベートブランド商品を、通常価格の40~90%オフで販売している。同社のビジネスモデルは、自社バイヤーが全米の小売企業を歩き回り、季節外れの商品、セール後に売れ残った余剰商品、顧客から返品商品などを安値で買い取る。また、店舗や倉庫が火災や水害に遭って売れなくて、保険会社が引き上げたサルベージ商品を買い取ることで成り立っている。
そのため、Dirt Cheapで販売される商品は、完全な新品の他に、汚れや破損がある訳アリ商品も含まれて、割引率が高い商品ほど状態は悪くなる。しかし1回の仕入限定で激安販売される掘り出し物も多数あるため、来店客からはトレージャーハンティング(宝探し)の楽しみ方がされている。同社は、商品の性質上、ネット販売は行っていないため、大都市から外れたローカル店舗に来店できる消費者のみが、激安の恩恵を受けられる。
■Dirt Cheap
■店舗内の紹介映像(ユーザー投稿)
このような激安ストアの形態は、日本でも1980~1990年代にかけて流行ったが、ジャストインタイム方式の物流ネットワークが構築される時代に進化したことで衰退してった。しかし、サプライチェーンの混乱と返品商品の急増によって、再びリコマース(Re-commerce)ビジネスとして注目されはじめている。
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■JNEWS会員レポートの主な項目
・インフレ下で積み上げられる商品在庫の特性
・需給がひっ迫する倉庫物件への投資
・米国倉庫の平均賃料と空室率の推移
・小規模シェアリング倉庫の開発モデル
・コロナ禍で成長するセルフストレージ事業
・国内トランクルーム事業の買収モデル
・物流2024年問題とファントム需要損失について
・急増する米国小売業の返品動向
・返品訳アリ商品を激安販売するショップの台頭
・即日配送を実現させるフルフィルメント施設への投資
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2022.12.22
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