オンライン専業DTCブランドが実店舗展開する事業転換
ペンシルバニア大学の卒業生が中心となり、2010年に眼鏡のDTCブランドとして創業したWarby Parker(ワービー・パーカー)は、ネットで取り寄せた5点までの眼鏡フレームを自宅で試着できるサービスを考案して急成長したが、2013年からは実店舗の販路拡大にも着手して、現在では全米で160店舗以上を展開している。
眼鏡のオンライン販売で障壁となるのは、新規顧客が視力検査をして処方箋を作成することだが、その役割を実店舗が担っている。Warby Parkerのサイトで近隣の直営店舗を探して予約をした後に来店すると、視力検査をして処方箋を作成してもらえる。その後は、店内のサンプルから好みのフレームを選んで眼鏡の注文をしても良いし、Webサイトやモバイルアプリから処方箋データを入力して、注文する方法もある。
売上高の内訳でみれば、60%がオンライン、店舗が30%という構成だが、どちらのルートでも、注文された眼鏡は専用工場でレンズの加工、研磨、フレームへの取付が行われて、6~10日後に納品されるため、実店舗の役割は検眼とフレームの試着ができるショールームの役割が中心になる。
■Warby Parker旗艦店の紹介映像
米国では、眼鏡の価格が平均で400ドル以上(フレーム+レンズ)と高額だが、Warby Parkerでは95ドル~という安価な設定で、業界に変革を起こしている。
しかし実際には、単価が高い遠近両用レンズを選ぶ顧客が全体の14%いる。また、初回購入した顧客は、2個目の眼鏡を再注文する割合が高いことから、同社の顧客1人あたりの年間平均売上は218ドル、その中から商品原価、フルフィルメント費用、人件費、店舗家賃などのコストを引いた、実質利益は45ドルとなっている。
一方で、顧客1人あたりの獲得コストは、2019年には27ドルだったが、2020年は40ドルにまで上昇した。これは、ネット広告の費用が上昇していることが理由であり、営業収支では赤字の状況が続いている。そのため、同社の株価は2021年末から2023年にかけて75%下落した。
新規の集客をネット広告だけに頼る方法では、赤字体質から抜け出せないことが明白になっており、今後は、実店舗での視力検診を通して新規顧客を獲得していくことが、重要戦略になっている。Warby Parkerの例に限らず、株価が暴落しているDTCブランドは、ネット広告による集客コストが高すぎる点が共通している。
ネット販売専業で成長してきたDTCブランドが実店舗を手掛ける目的は、小売業としての販路をネットとリアルに分散することではなく、両チャンネルの相乗効果を生み出して、顧客単価や顧客寿命を高めることが目的だ。そのため、実店舗では物販には拘らないサービス業の形態も模索されている。
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■JNEWS会員レポートの主な項目
・DTCブランドが実店舗展開する理由
・模索される実店舗ビジネスモデル
・アパレル販売とトレーニングジムの融合店舗
・ヘアケア商品ブランドが転換するヘアカラーバー
・DTCブランドの店舗運営を代行するビジネス
・Retail-as-a-serviceのビジネスモデル
・デジタルネイティブな未来店舗の開発形態
・仲間と出会えるクラブハウス店舗の開発例
・修理を主力サービスにする老舗百貨店の変革
・衰退小売業から高級品リユースビジネスへの事業転換
・テクノロジー再編で進化する近未来の買い物スタイル
・売らずに資源を循環させるサーキュラービジネスの作り方
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2023.2.21
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