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福利厚生として開発されるオンデマンド給与払い

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JNEWS会員配信日 2022/8/19

 給料日前に働いた分の給与を引き出せるサービスは、労働者からの潜在ニーズが高く、オンデマンド給与(必要な時に引き出せる給与)として人気が高まっている。企業との提携によりオンデマンド給与支払いを提供しているのが、米国とカナダで2014年から立ち上げられている「ZayZoon」というサービスである。

ZayZoonは、雇用主としての法人登録を済ませている企業の従業員が、1回あたり200ドルまでの賃金を、5ドルの手数料で給料日前に引き出すことができる。それよりも少額の出金も可能だが、手数料は5ドルの固定料金となるため、1回あたりの上限である200ドルで行うことが推奨されている。100ドルの出金を2回行うよりも、200ドルを1回で出金したほうが利用コストは安くなるためだ。

ZayZoonの収益構造も、Earninと本質的には共通しており、チップと手数料の違いはあるものの、利用者が1回200ドルの給与前払い(給料日までの2週間)に対して5ドルの手数料を払うと実質年利は65.1%になり、常習的な利用者が増えるほど魅力的な収入になる。これまでのデータによると、利用者の2~4割は定期的な給与前払いを行っている。そのため、ZayZoonは雇用主の会社側からは月額会費や手数料は徴収せずに、無料で利用登録ができるようにしている。

ただし、米国では貸金業の上限金利が各州によって決められているため、実質年利で換算した手数料率を下げることが、健全なサービスとして定着させていく上でのポイントになる。具体的には、月間の利用回数を制限したり、手数料の一部を会社側が負担する仕組みが導入されている。現在では 3000社以上の企業がZayZoonを、従業員向けの福利厚生として導入しているが、その中にはマクドナルドやドミノピザなどのフランチャイズ店舗も含まれている。

《ZayZoonの仕組み》

ZayZoon

このような給与前払いのスキームは「Earned wage access (EWA)」と呼ばれており、EarninやZayZoonのような業者はEWAプロバイダーとして世界各国で成長してきている。その背景には、コロナ禍のインフレにより毎月の支払いに困窮している世帯が増えていることがある。

英国の消費者を対象に行った公的調査、Financial Lives Surveyによると、平均的な消費者は、手取り収入の43%を各種の支払いによって給料日当日に失っており、英国成人の10%にあたる510万人は、銀行口座の当座貸越機能などを利用して家賃、住宅ローン、クレジットカードなどの支払いを行っている。

しかし、銀行の当座貸越にも金利手数料が発生しているため、口座の残高不足に苦しむ世帯では、さらに翌月の資金繰りが厳しくなっていく。そのため、企業の福利厚生として「給料前払い」のオプションを提供することが、求人応募者を増やし、離職率を低下させることに役立っている。

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