Z世代起業者が牽引するスニーカー再販市場の新業態
カジュアルなファッションが社会的に認められるようになり、人気が上昇しているのがスニーカーの市場である。象徴的なのは、スーツにスニーカーのコーディネートが流行し始めていることで、ファッションサイトでも特集を組むようになってきている。
Z世代やミレニアル世代の中では、スニーカーが新たなステイタスシンボルになっており、高級ハンドバッグよりも大きな市場に成長してきている。世界のスニーカー市場は、2012年には342億ドルだったのが、2020年には707億ドル、さらに2025年には1027億ドルにまで成長することが予測されている。
スニーカー市場の拡大は、ユーザーがビジネス層にまで拡大していることに加えて、スニーカーがコレクション対象となり転売目的でも取引されるようになったことも関係している。スニーカーを愛して、収集に熱狂するユーザー層は「スニーカーヘッド」と呼ばれており、NikeやAdidasが毎年発売する限定スニーカーを競い合って購入している。
ブームの発端は、2021.10.2号で紹介したStockX、Stadium Goods、FlightClubなどのスニーカー再販サイトが登場したことで、個人でも転売ビジネスがしやすくなったことだ。限定スニーカーの購入に成功したコレクターは、箱付き新品のまま保管して、取引相場が上昇しているタイミングで、これらのサイトに出品している。たとえば、ナイキが人気アーティストとコラボして限定発売するスニーカーは、総じて人気が高く、発売日に新品定価(150~200ドル)で購入できれば、1000~2000ドル超の転売利益を稼ぐこともできる。
■StockX
■Stadium Goods
■FlightClub
StockXの調査によると、スニーカーの一次市場に対して、転売される二次市場は15~25%の規模がある。転売スニーカーの平均売買価格は200ドル台だが、一次市場に対して40~60%のプレミア価格で取引されている。主に売買をしているのはZ世代にあたる25歳未満の若者で、この世代にいる男性の33%、女性の26%は自分を「スニーカーヘッド」と意識している。彼らにとって、スニーカーは自己表現をするためのアイテムであると同時に、資産や投資の対象にもなっているのだ。
■StockX Snapshot: The State of Resale
StockXにサービス体系は、スニーカーのオンライン売買が成立した後、出品者(売り手)は商品を2日以内にStockX直営の認証センターに送り、真贋鑑定により「本物」の認定がされると、売り手に発送される仕組みになっている。そのため、StockXの取引では偽物が流通するリスクが低い。(詳細は2021.10.2号で解説)
StockXでは、さらに便利な仕組みとして、ニューヨーク、ロンドン、東京などで「StockX Drop-Off」という店舗も展開しはじめている。こちらでは、オンラインで売買が成立したスニーカーを、売り主が梱包せずに店舗に持ち込むだけで、鑑定、発送、代金決済の手続きが行われる。売り主には、持ち込んだスニーカーの鑑定が合格した段階で販売代金が支払われるため、最短では1時間以内の現金化も可能で、個人の転売ビジネスがしやすくなる。
StockXのビジネスは、転売商品を買い取るのではなく、売り手と買い手のマッチングを行い、鑑定と商品発送の手数料として8~10%を徴収する仕組みのため、在庫リスクを抱えずに事業を拡大していくことができる。この仕組みは、他のブランド品の転売にも流用できるため、日本でも多い「ブランド買い取り専門店」の業態に変わって成長していく可能性がある。
■StockX Drop-Off店舗の紹介映像
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■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2022.7.25
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