米国で普及するペイロールカードの仕組みと活用方法
米国の給料の支払い方法は、小切手と銀行振込が主流だが、第三の支払い方法としてペイロールカード(payroll card)が普及してきている。
ペイロールカードは、プリペイドカード式の給与受け取り口座で、会社はそこに給与を電子的に支給していくものだ。ペイロールカードは、クレジットカードのように提携店舗で買い物に使うことができるし、ATMから現金を出金することもできる。
ペイロールカードによる給与の支払いは、各州の法規によって可否が異なるが、認可されている州であれば、銀行口座を持たない(持てない)従業員に対しても、簡単にカードを発行することができ、会社側は送金手数料を安く抑えられるメリットがある。
そのため、給与の支払い方法を多様化したり、従業員からの早期支払い希望にも対応しやすい。米国では、複数の店舗で利用できるオープン型プリペイドカード市場の中で、ペイロールカードのシェアが12%まで成長してきており、2020年の時点約880万枚が発行されている。一部のスーパーやコンビニでは、ペイロールカードの利用でキャッシュバックを受けられる特典を付けているため、高年収者の中でも、銀行振込の給与払いをペイロールカードに変える動きも出てきている。
《ペイロールカードの特徴》
○プリペイド式のため審査不要でカード発行できる
○クレジットカードのように加盟店舗での買い物ができる
○キャッシュバックやポイントが得られる特典がある
○ATMからの現金出金もできる(手数料無料)
○複数の給与(本業と副業など)を1つのカードで管理できる
○州の法律によりカード残高には預金保険が適用される
ペイロールカードの発行は、企業が決済会社と団体契約をして従業員に配布する方法と、従業員が既に保有しているペイロールカード(州の認定を受けているもの)を給与受取口座として会社に申告する方法の2種類がある。パートで複数の仕事を掛け持ちしているようなケースでは、後者の方法により、複数の給与を1つのカードで管理することができる。代表的なペイロールカードとしては、VisaやMasterが発行するものがある。
■Visa Payroll card
■Mastar Payroll card
■Visa Payroll cardの紹介映像
さらに10~20代の労働者から人気となっているのは、送金アプリをペイロールカードとして利用する方法だ。米国の若者から人気が高い送金アプリの「CashApp」や「Venmo」には給与受取り機能があり、アプリの管理メニューから雇用主の会社を検索、数ヶ所のチェックボタンを操作するだけで、週払いや隔週払いの給与が入金される。送金アプリを給与口座として利用することの利点は、小切手で受け取った給与を現金化するよりも、数日早いタイミングで生活費やレジャー費として使えることである。
銀行振込についても、米国で銀行口座を維持するには、およそ1500ドル(約18万円)の平均預金残高をキープしておく必要があり、それを下回ると毎月およそ12ドル(約1300円)の口座手数料がかかってくる。1500ドルの平均残高をキープできない成人は約5100万人いるとみられており、彼らの中では、銀行離れが加速して、送金アプリへの乗り換えが進むとみられている。
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