オンライン酒販ビジネスの収益構造と購買特性
eコマースの中でも、アルコール飲料が他の商材と異なるのは、購入者を飲酒が認められた成人に限定して、各州の規制に適合した販売を行わなくてはいけない点である。米国では、州によって酒類販売のライセンス、ネット販売、宅配のルールが異なるため、合法なエリアに限定した販売をする必要がある。
2012年に米マサチューセッツ州ボストンで創業した「Drizly(ドゥリズリー)」は、ビール、ワイン、スピリッツなどのアルコール飲料を専門とした宅配サービスの会社で、全米1400以上の都市をカバーしている。サイトとアプリ上では、各エリアで宅配可能なアルコール飲料のリストが掲載されており、希望の商品を注文すると最短で60分以内、または2~3日以内に宅配してもらえる。同社が獲得している顧客アカウント数は、250万件以上と言われている。
Drizlyのビジネスは、自社で商品を在庫するのではなく、酒販免許を取得している各地域の小売店をオンライン出店させて、顧客からの注文を取り次ぐマーケットプレイス型となっている。前述の通り、アルコール飲料は各州の規制に則った販売をする必要があり、営業免許を取得していない地域の顧客には販売できない煩わしさがある。そのため、中小の酒屋がeコマースサイトを独自に構築するのは非効率であり、Drizlyのような酒類専門のマーケットプレイス事業が成り立っている。
Drizlyの収益源は、出店する小売店の商品数や売上に応じたライセンス料を、月額100~10,000ドルの範囲で請求する。出店料ではなく「ライセンス料」としているのは、Drizly自体が各州の酒販免許を取得していないことが関係している。また商品を注文する顧客からも、1注文あたり1.99ドルのサービス料を課金している。その他に、特定の商品がサイトの上位に表示されるようにした広告収入もある。
Drizlyの中には、約3000の小売業者が出店しているため、消費者にとっては、複数の店舗から目的の商品を探すことができ、珍しいワインやシャンパンなどを見つけやすく、価格比較もしやすいメリットがある。Drizlyの売れ筋商品は、定番の商品だけに集中するのではなく、まだ一度も飲んだことのない酒を試してみようとする冒険的なニーズに対応した、ロングテールの構成になっている。
■Drizly
■Drizly宅配の紹介映像
同社が飲酒年齢の成人、約15,000人を対象に行った調査レポート「Drizly消費者レポート」によると、2020年3月以降は、Drizlyサイトの売上が8倍に急増しており、ミレニアル世代とZ世代(20~30代)の若い顧客層が多いのが、リアル店舗とは異なる特徴である。そして、オンライン顧客の5割は次回以降のリピート購入をしている。
若者の中では、コロナ禍の新たなライフスタイルとして、テレビやビデオを見ながら一人で酒を飲むカウチポテト的な飲酒スタイルが増えている。これは、家族と食事をしながら飲酒する従来のスタイルとは異なる習慣として、コロナ後も定着していく可能性が高い。
コロナを転機として、アルコールの販路が変化している市場動向については、酒販業界やデリバリー業界でも注目しており、Drizly社に対しては、2021年2月にUberが11億ドル(約1150億円)で買収する契約が成立した。
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