YouTubeに依存しないWeb3.0の動画配信サービス
Web2.0時代の動画配信サービスといえば、YouTubeが7割以上のシェアを取っており、動画投稿者の多くが利用している。しかし、非公開のアルゴリズムによって動画の人気が決められたり、不適切と判断された動画が突然削除されたりするため、民主的なプラットフォームとは言えない面がある。チャンネル登録者が100万人を超すような人気ユーチューバーになるほど、アカウント凍結に備えて、次の投稿先を模索する動きはある。
具体的な代替先として登場してきたのが、2020年12月に立ち上げられ「Odysee(オデッセイ)」という動画配信サイトで、サービス開始から3ヶ月間で870万人のユーザーに利用されている。このサービスの特徴は、LBRYというブロックチェーンのプロトコルによって構築されており、世界のサーバーに分散される形で動画が配信されていることだ。運営会社がすべての動画を検閲するわけでなないため、一方的な判断で、動画が削除されることがない。※ただし、ポルノ、暴力、著作権侵害など違法コンテンツに対するガイドラインはある。
Odyseeは、電子コンテンツの流通を目的とした仮想通貨「LBRYクレジット」の開発チームが母体となり、オープンソースで数百人ものエンジニアによって開発が進められている。フォロアーの数には関係なく、クリエイターの権利を平等に扱える動画配信サービスに育てていくことが、プロジェクトの目的である。
クリエイターがOdyseeを利用して動画を収益化する方法は、大きく2つが用意されている。1つは、コンテンツの視聴回数、平均再生時間、コンテンツの種類、エンゲージメントなどのデータから算定された視聴報酬を分配することで、その具体的なルールは開示されている。2つ目の収益源として、クリエイターが視聴者から寄付(投げ銭)を直接受け取れる機能も用意されている。将来的には広告収入を分配することも計画されている。
そして、Odyseeの運営側は、クリエイターが稼いだ収益の100%を還元することを公言しており、手数料や不透明なマージンは徴収していない。これができるのは、Odysee内で決済に利用する通貨を「LBRYクレジット」に限定しており、クレジットの発行元でもある運営会社は、通貨発行量の10%を準備金として、サービスの開発、維持にかかる経費と、創業者への報酬に充てているためである。
LBRYクレジットには、仮想通貨としての価値があり、2022年1月時点では、1クレジットあたり0.028ドル(約3.2円)で換金することができる。
一方で、Odyseeの動画配信環境は、「seeder」と呼ばれる協力者達によって、分散された配信サーバーが運用されている。これは家庭用のPCにもインストールできるアプリによって機能するもので、seederのPCには自分が視聴する動画が、ダウンロードされる形で保存される。そのため、繰り返して見たい動画は、ストリーミング視聴よりも再生が安定するメリットがある。このアプリにある共有機能をオンにすれば、他のユーザーも保存データにアクセスして視聴できるようになる。
他人と動画データを共有することについては、セキュリティー上の問題が心配されるが、オープンソースによって世界に分散したエンジニアが悪意のアクセスを監視して、ソフトウエアの改善をする体制が構築されている。現状では、まだ配信サーバーの数が少ないため、視聴回数が増えると再生速度が遅くなる欠点があるが、seederとして配信に協力すると報酬が得られる仕組みが充実してくると、動画の配信拠点は飛躍的に増えていく。このような仕組みは、仮想通貨のマイニングをして報酬が得られることや、P2P型のオンラインゲームとも共通している。
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