eコマース詐欺を見破るソリューション開発の着眼点
eコマース詐欺の分析を専門に行う「Merchant Fraud Journal」によると、海外ではeコマースサイトを狙った詐欺は、コロナ禍を転機として前年比でおよそ2倍に増えており、手口も巧妙化している。その背後には、組織化された詐欺集団の存在があり、クラウドソーシングサイト上で雇用主を装い、リモートできる仕事を求めるワーカーに商品注文させた後、詐取するケースが増えている。そのため、eコマース業界では詐欺被害を防ぐための対策システムが多数開発されるようなっている。
その仕組みは、eコマースプラットフォームやカード会社から入手した膨大な取引履歴をAIが分析して、詐欺のパターンをデータベース化しておき、注文の内容や頻度、注文者のIPアドレス、位置情報などから、詐欺の可能性が高いと判定すると、注文受付が自動的に停止するシステムが主流になっている。
米ジョージア州アトランタを拠点に開発されている「Kount」は、クライアントとしている9000件ものブランド企業や決済プロバイダーの顧客アカウントから、年間320億件ものオンライン取引をAIが分析して、「信頼できるID」と「詐欺のリスクの高いID」を数ミリ秒以内に判別することができる。システムは、注文者のIPアドレス、メールアドレス、カード番号、配送先住所などを監視しており、過去の詐欺パターンに合致する注文をブロックする。
ただし、厳しすぎるフィルタリングは、小売業者にとって販売機会を失うリスクもあるため、詐欺判定のレベルを「しきい値」の変更によって調整できる機能も用意されている。
また、カナダのバンクーバーを拠点とする「GeoGuard」は、位置情報による詐欺検出をするプラットフォームで、ユーザーの現在地を正確に把握することで、疑わしいデバイスからの注文を特定することができる。詐欺をするユーザーの大半は、IPアドレスの偽装やVPN(仮想専用回線)を経由することで、自分の所在地を特定されないようにしているが、GeoGuardは独自の技術によって不正アクセスの発信場所を特定することができる。
ロケーション詐欺の事例として、ドイツの消費者は分割払いを好む国民性があり、ネットショッピングでも分割払いの割合が4割を超している。そのため、他国にいる詐欺犯が、ドイツユーザーのアカウントをハッキングして高額商品を分割カード払いで注文した後、ドイツ国内を発送先として受け取った商品を売却、換金する詐欺が横行している。アカウントをハッキングされたユーザーは、カード決済が分割払いのため、詐欺被害に遭ったことに気付くまでに時間がかかり、その間に詐欺犯は盗品を売りさばくことができる。
GeoGuardのロケーション判定技術は、もともと映画ストリーミング配信サイトがコンテンツ著作権の問題から、アクセスできるユーザーを特定の国に限定する目的で使われていたが、コロナ禍以降はeコマースサイトの詐欺が増えたことで、注文者の位置情報を正確に把握する目的でも活用されるようになっている。
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