アマゾン出品する小規模事業者を専門にした買収ビジネス
米国ではアマゾン・マーケットプレイスの出品者(アマゾンセラー)を専門とした買収ビジネスが登場して、投資家からも高く評価されている。
2018年に米マサチューセッツ州メドフィールドで創業した「Thrasio(スラシオ)」は、そのパイオニアといえる存在で、商品の在庫管理、発送作業までをアマゾンに任せられる「Amazon FBA」の中でECビジネスを展開する小規模事業者を専門に買収して、元オーナーに代わって効率的な運営をすることで事業価値を高めている。
Thrasioが買収対象とするアマゾンセラーは、独自性の高い商品で年間100万ドル超の売上があり、アマゾンカテゴリー内でトップの座を獲得していること、ユーザーレビューでも評価が高いことが条件となっている。商材は、流行による売上変動が激しいものより、製品ライフサイクルが長い日用消費財が高く評価されている。また、色やサイズによって在庫のアイテム数が増える商材よりも、少ないアイテム数で売上が稼げる商材のほうが良い。
買収の査定額は、商品が稼ぎ出す年間の純利益と、オーナーが得ている報酬(給与)の合算値を2~4倍した金額が基準になっている。たとえば、年間の売上が100万ドルで純利益が20%、オーナー報酬が5万ドルの場合には、買収額は50万~100万ドルの範囲で交渉される。1件あたりの買収契約は平均43日間で完了して、買収金額はすべて現金で支払われる。
※契約内容によっては、前オーナーが買収後もサイト運営に関わり、商品売上による収益をThrasioと分配しているケースもある
スモールビジネスの買収提示額として「(純利益+オーナー報酬)×2~4倍」は、買い手にとってリーズナブルな設定といえるが、個人経営のアマゾンセラーは年間売上が100万~300万ドルの辺りで成長の限界を感じており、100万ドル前後でビジネスを売却できるのであれば、交渉に応じるケースが多い。そして再度、新たなアカウントで新商品を開発、育てていくのが良いという考えだ。
買収されたアカウントは、Thrasio側のチームが運営を担当し、自社開発された管理プラットフォームの中で、パッケージデザインの変更や広告マーケティングを効率的に行うことで、さらに売上を伸ばしていく。Thrasioは商品が稼ぎ出す利益から、買収金額を1~2年以内に回収する計画だ。
■Thrasioの紹介映像
同社は創業から2年の間に、大手ベンチャーキャピタルから4回の資金調達を行い、総額で5億ドル以上の調達に成功。その資金を元手に60件以上のアマゾンセラーを買収して、現在の企業価値は10億ドル超と評価されている。スタートアップの中でも、創業2年でユニコーン企業(評価額10億ドル以上)にまで成長するのは、米国でも最速と言われている。
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