家賃滞納を防ぐフレキシブル家賃の決済ソリューション
コロナ禍では賃貸不動産の家賃滞納も深刻な問題になっている。米国の賃貸情報サイト「Apartment List」が、約4000件の世帯を対象に行った調査によると、新型コロナが流行しはじめて1ヶ月後、2020年4月の時点でも、アパート家賃の延滞率は25%(4人に1人)となっている。延滞者のおよそ5割は家賃の一部しか払うことができず、残りの5割は失業などにより、家賃を払えるメドが全く立っていない。
コロナ前と比べると、家賃延滞率は5倍近く上昇しており、収入が不安定な若い入居者(18~29歳)ほど、延滞率は高いのが特徴である。また、今は延滞をしていなくても、失業で収入を失った場合には、6ヶ月以内に家賃の支払いに困るという回答が多いことから、新たな延滞者が増えていくことも予測される。
家賃延滞が増えると、大家は督促や立ち退き交渉の負担が大きくなるため、家賃の集金方法を見直していく必要がある。そこで考えられているのが「フレキシブル家賃」の仕組みである。
家賃の支払い(決済)は月に1回されるのが普通だが、生活費や他のローンの支払いが重なると、給料日前の銀行口座は残高不足になり、延滞が生じてしまう。
そこで、フレキシブル家賃は、AIが口座の入出金を常時分析して、家賃の支払いスケジュールをカスタマイズしていく。
それを具現化したサービスにしているのが、米国の「Till」というスタートアップ企業である。同社のシステムは、アパート入居者の許諾を受けた上で、銀行口座の入出金データをモニタリングして、残高不足が生じにくい適切なスケジュールで家賃決済を行っていく。米国では、週払いの給与体系も多いため、その場合には、週1回のタイミングで家賃決済を行えば、延滞率を下げることができる。
しかし、入居者にとっては、預金口座の個人情報を提供することになる。その見返りとして、フレキシブル家賃の決済システムを許諾した入居者に対しては、家賃決済の回数に応じて、ポイント報酬が付与されるロイヤリティプログラムも考案されている。
■Till
しかし、フレキシブルな家賃決済のスケジュールを設定しても、失業や収入の減少に伴い、どうしても延滞が生じてしまうケースもある。その場合に、Tillは独自の貸し付けサービスを提供して、延滞が回避されるようにしている。これは、入居者のクレジットスコアを下げない利点があるが、Tillに対しては新たな債務を負うことになる。
Tillが描いている事業は「家賃の貸し付けサービス」が本質であり、これには賛否両論があるが、コロナ禍でも、大家が的確に家賃を集金できる仕組みとして注目されいる。このビジネスモデルはシードステージのものだが、不動産分野のテクノロジーを専門に投資を行うベンチャーキャピタルの「MetaProp NYC」が資金提供をしている。
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・JNEWS LETTER 2020.7.23
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