STEM教育と部活動としてのeスポーツビジネス
eスポーツ市場への参加者は、プロゲーマーをピラミッドの頂点として、その下に一般のアマチュアプレイヤー、さらにオンラインで観戦する視聴者によって構成されている。潜在顧客層が他のスポーツよりも広いことにより、魅力的な収益構造が形成されている。
「High School Esports League(HSEL)」は、全米の高校を対象にしたeスポーツのトーナメントを主催している団体で、高校生が健全かつ合法的にゲーム競技を楽しめる配慮がされている。STEM(科学・技術・工学・数学)教育の優良カリキュラムを選定する「STEM.org」の認定も取得しているため、高校の正式なクラブ活動としても採用されて、2,100以上の学校と約60,000人の高校生が参加している。
各高校でHSELに加盟したeスポーツクラブを作るには、監督役となる教師を決めて、部員を募集する流れになるが、生徒側からクラブ発足の声が高まり、校内でeスポーツに理解のある教師に監督を頼むケースも多い。※HSELでは、監督役の教師がいないチームの参加は認めていない。
HSELのトーナメントは、「CS:GO」「Overwatch」「Rocket League」など、米国でメジャーな10種類のゲームを競技の対象としている。大会は春、秋、冬の年3回、各8週間の日程で開催される。ゲームの対戦は、HSELが用意するサーバーにアクセスするオンライン方式が主体のため、米国内の高校生チームであれば、地理的なハンディは少ない。
各大会へのエントリーは有料で、生徒1人あたり37ドルの設定だが、チーム単位の団体割引が適用になり、7人以上のチームは10%割引、20人以上は20%割引、40名以上のチームは参加人数に関係なく、1,036ドルの固定料金となっている。このエントリー料は、各高校のチームや生徒にとって負担になるが、HSELでは、地域のスポーツクラブが資金調達できるクラウドファンディングの「FundMyTeam」と提携しており、地域の住民や企業からの寄付を募ることが推奨されている。
一方、HSELが集めたエントリー料は、大会の賞金資金に充てられるが、成績上位者に対して「大学進学のための奨学金」として賞金が支給されている。これまで、家庭の財政事情から進学を諦めていた高校生に対して、eスポーツによって大学への道筋を築くことも、HSELが掲げている目的である。
■High School Esports League(HSEL)
HSELのeスポーツ事業は、教育者との共同研究により、子どものビデオゲームに対する熱意や集中力が、学業成績の向上やSTEMの才能開発に役立つ、という理論に基づいて開発されている。さらに、eスポーツの中で培われるチームワークや、オンラインによるコラボレーションの方法、ゲームで勝つための戦略的な思考は、社会人になってからも役立つ経験やスキルになる。
米国の大学でも、eスポーツチームを結成したり、eスポーツの教育課程を設ける動きが広がっているが、実際に、大学のeスポーツ大会で優秀な成績を収める者は、科学や数学を専攻している学生の割合が高い。そのため、「eスポーツ」は、プログラミング教室やロボット教室と並んで、STEM教育の有力事業として、米国政府や各州の自治体も推進しはじめている。
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