株式取引の売買アルゴリズムを個人でも開発できるプラットフォームが海外には多数あり、投資成果を競うコンテストも開催されている。優れたアルゴリズムは機関投資家に提供され、ライセンス料を分配する仕組みも構築されている(JNEWSについて
投資アルゴリズムを作る天才クオンツの育成ビジネス

JNEWS
JNEWS会員配信日 2018/10/1

 コンピュータに為替や株式売買のタイミングをプログラミングして自動売買させる「アルゴリズム取引」は、1980年代から既に30年以上の歴史があり、現在では米国の株式市場で60~70%の取引がアルゴリズムによるものとみられている。
ヘッジファンドを含めた機関投資家を中心に、アルゴリズム取引は普及しているが、その目的は「取引コスト」を軽減させることにある。

人間(ファンドマネージャー)に投資判断を任せる上では、当然ながら高い人件費がかかるし、金融市場の変化に対して投資判断が遅れた時に生じる「利益の喪失や損失」も、取引遅延コストと考えられている。

また、銘柄の売買をするタイミングも、従来の「指値注文」と「成行注文」には、それぞれ一長一短がある。指値注文は、相場の動きに対して最適な指し値をすることが難しく、暴騰や暴落の際には取引のタイミングを逃してしまうことがある。
一方、成行注文は即時売買ができるのが利点だが、理想の価格よりも高く買ったり、安く売ったりすることになる。しかし、アルゴリズム取引であれば、システムが相場の動きを常時モニタリングしているため、売買のタイミングを逃すことによるロスが少ない。

 このようなアルゴリズム取引のプログラムは、個人でも構築することが可能になっており、その力は、機関投資家にも影響を与えている。彼らのことは「クオンツ(Quants)」と呼ばれ、高度な数学を駆使して金融市場の分析や投資戦略を行う職業としても成り立つようになっている。※クオンツとは「Quantitative(数量的、定量的)」が語源。

クオンツには、数学や統計学に詳しい学生や大学教授、科学者やエンジニアなどがチャレンジしているが、優秀なクオンツを育成、発掘する場となっているのが、個人向けのアルゴリズム取引開発プラットフォームである。

2011年に米ボストンで創業した「Quantopian(クオントピアン)」は、個人の投資家や研究者に対してクラウドベースで株式のアルゴリズム開発プラットフォームを提供している新興企業で、現在では約20万人のクオンツを集めている。


投資アルゴリズムを学びたい者は、同サイトに無料でメンバー登録をすることができ、2002年から現在までの米国株式市場の値動きが記録されたデータセットを活用しながら、プログラム言語の「Python」でアルゴリズムを書くことができる。
初心者向けには、アルゴリズムの作成方法を解説したテキストとビデオ教材が用意され、コミュニティの中には、お手本となるプログラムも公開されている。最初はそれをコピーしても良いし、そこから独自のアルゴリズムに改良していくことも認められている。

作成されたアルゴリズムは、どの程度の投資成果が出せるのかを、過去の株式相場から検証するバックテストが行えるため、その結果を参考にしながら、アルゴリズムの完成度を高めていくことができる。

Quantopian社のビジネスモデルには、大きく2つの柱がある。1つは、各メンバーがアルゴリズムを開発するのに必要なデータセットの一部を有料で販売することにある。さらに2つ目の柱として、コミュニティの中でアルゴリズムの優劣を競う定期的なコンテストを行い、その中で優秀なアルゴリズムを機関投資家に提供している。そのアルゴリズムが実際の株式売買で稼いだ収益の一部をロイヤリティとして徴収し、アルゴリズムの作者(クオンツ)と分配している。アルゴリズム自体の所有権は作者側が保持して、プログラムソースの秘匿性も守られている。

Quantopian

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