ラズベリーパイを活用した起業モデルとIoTビジネスの入り口
20年前と比べれば、電子パーツの性能は飛躍的に向上し、安価になっていることから、個人の電子工作でも、高性能な電子機器の開発をすることも可能になってきている。
その心臓部として使われ始めているのが、35ドル(日本では4千円台)で購入できる「Raspberry Pi(ラズベリーパイ)」という、小型のパソコンボードである。
筐体は無く、名刺サイズの基板にパーツが装着されているシンプルな作りだが、ARMクアッドコアのCPU、1Gバイトのメモリ、USBポート、HDMI端子などパソコンとしての基本機能を備えている。ハードディスクは無いが、データの保存はメモリーカードによって行える。
OSにはオープンソースのリナックスが使われていたが、マイクロソフトが、ラズベリーパイ向けに「Windows10」の無償提供を発表したことから、使い勝手が向上して、多方面で活用されることが期待されている。
このマシンは、もともと英国ケンブリッジ大学に勤めていたエベン・アップトン氏が、子供の科学に対する好奇心が薄れてきているのを危惧して、手軽にプログラミングの学習や、電子工作の実験ができる(壊しても構わない)安価なパソコンとして考案されたもので、非営利の財団として開発が行われ、製造は外部の工場に委託されている。
初期モデルが発売された 2012年から現在までに、世界に300万台以上が出荷されているが、その用途は、教育や趣味の電子工作に限らず、IT起業するためのツールとしてや、産業分野にまで広がっている。
■Raspberry Pi公式サイト(英国)
■日本での公式販売サイト
【ラズベリーパイを活用した起業アイデア】
ラズベリーパイには、MITメディアラボが開発した「Scratch(スクラッチ)」という子供向けのプログラム言語を使うことができ、ソースコードを書けなくても、「動かす」「回す」「音を鳴らす」などの指令ブロックを組み合わせていくことで、ロボット制御のプログラムを作ることができる。
■Scratch(スクラッチ)(MITメディアラボが開発)
■Raspberry PiとScratchによるロボット動作例
そして、さらにラズベリーパイを便利に活用できるデバイスや周辺機器を開発することが、個人の起業テーマとしても浮上してきている。それらのアイデアは、キックスターターのようなクラウドファンディングサイトに投稿されて、事業化に必要な資金を調達しているケースが多い。
「KANO」はその一つで、ラズベリーパイをベースにした、子供向けプログラミング学習用パソコンを発売する事業プランをキックスターターに投稿(2013年12月)したところ、目標額(10万ドル)を上回る、15万ドルの資金を獲得できた。その後、1台150ドルの価格で商品化を実現している。
■KANO
また、「OpenSprinkler(オープン・スプリンクラー)」は、自宅の芝生や庭への水撒きを自動制御できるデバイスで、希望する日時の散水をスケジューリングしたり、外出先からスマートフォンでの操作ができる他、その地域の天気予報をデバイスが自動収集して、降雨条件によって散水スケジュールを変更することもできる。
こうした高性能な機器を大手メーカーが売り出せば、どうしても高額になってしまうが、同機は、個人の電子工作愛好者が、ラズベリーパイをベースに製作しているため、価格は完成品が 149ドル、購入者がパーツを組み立てる DIY用キットは99ドルと、安価に抑えられている。
もともとの発想は、開発者が自宅の庭に芝生を植えた際に、定期的に水撒きができる市販のタイマーをショップで探したところ、20年以上前に設計されたようなタイマーしか無かったため、自分で製作してみることにしたものだ。
ラズベリーパイを活用した電子工作では、多数のコミュニティが形成されており、一人での開発に行き詰まった時には、質問をしたり、共同開発者を探すこともできるのが特徴。ラズベリーパイを利用したホーム・オートメーションシステムは、他でも幾つかのプロジェクトが立ち上がっている。
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■この記事の完全レポート
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