written in 2012/8/14
事例:kickstarter
スモールビジネスの資金調達では、創業者が自己資金を捻出するか、身近な人脈から出資者を募ることが基本になるが、それだけでは、目標の金額が集まらないことも多々ある。そこで最近は、ネットで不特定多数の人達から資金を調達できるソーシャル金融の仕組みも登場してきた。「Zopa(ゾーパ)」や「Prosper(プロスパー)」が代表例といえる。
ただしこれらは、従来のノンバンク系や消費者金融に代わるファイナンスサービスとしての色合いが濃く、資金の借り手は、年率7〜12%もの高い金利と共に元金を返済しなくてはならないため、新規事業の資金調達ルートとしては、不向きであることがわかってきた。
そこで、次に注目されているのが、「Kickstarter(キックスターター)」という、米国の資金調達サイトで、起業者やクリエイターが、自分が計画している事業プロジェクトを公開して、それに賛同したり、協力したいユーザーからの出資を小口で集めることができる。
たとえば、考えているスモールビジネスの実現に必要な資金が1万ドルと算定した場合、1口あたりの出資額を100ドルに設定して、100人の出資者が集まれば、目標額を達成できる。さらに、それよりも多くの出資者が集まれば、予定よりも潤沢な資金で事業をスタートすることができる。
ただし、期日内に目標額をクリアーできなかった場合(例:100ドル×95人しか集まらなかった)には、すべての出資がキャンセルされてしまうルールになっている。こうすることで、優良な事業プロジェクトにのみ出資が実行される仕組みで、キックスターター社では、決済された出資金の5%を手数料として徴収する収益構造になっている。
《キックスターターによる資金調達の流れ》
さらに、キックスターターによる資金調達で最大の特徴は、出資者に対するリターンを、金銭(配当金の支払いや返済金)ではなく、モノやサービスとして提供できる点にある。
具体例として、キックスターターの中で出資者が募集されている「TOUCH TIME」というプロジェクトでは、スマートフォンのように指で画面を滑らせながらメニューの選択ができるタッチスクリーン式のデジタル腕時計を開発しようとしている。1980年代に流行したデジタルウォッチを、今の時代に再現すれば、こんなデザインと機能になるというものだ。
(海外ネットビジネス事例一覧へ)
●段階別にみた米スタートアップ企業の資金調達
●夢を実現するまでの第一の起業と第二の起業の違い
●フェイスブックの成長を支えたと株式セカンダリー市場
●米国セカンダリー取引市場の仕組み
●中小ビジネスの売買市場と投資マネーの流入
●スモールビジネス投資の出口戦略
●不特定多数の出資者を集めるクラウドファンディング
●キックスターターによる資金調達の仕組み
●ファンや顧客を出資者にする資金調達モデル
●新興時計メーカーが新作を売り出す資金調達モデル
●ユーザー参加で需要を先読みするソーシャルプロダクト開発
●安全な野菜を産直販売するコミュニティ農業(CSA)の台頭
●引退者から脱サラ組へ譲渡される中小ビジネスの取引方法
●金融機関には頼れない時代の新規開業スタイルと資金調達方法
●非営利から商用化への道を歩き始めるマイクロファイナンス
●ソーシャル金融の誤解と膨張する社会貢献マネーの裏側
JNEWS
LETTER 2012.8.14
※アクセスには正式登録後のID、PASSWORDが必要です。
■この記事に関連したバックナンバー
●金融機関には頼れない時代の新規開業スタイルと資金調達
●モノ作り立国の頭脳となる研究者の育成と資金調達ルート
●友達同士の割り勘サービスから始まるソーシャル金融の波
●開業資金を抑えたローコスト起業を実現させるクラウドサービス
●クラウドワークとネット副業を普及させるペイパルマネーの実力
●iPhoneアクセサリー商品を生み出す個人起業家の開発モデル
●金融ビジネスの表舞台に踊り出るクラウドファンディング業界
●個人が「メーカー」として起業するパーソナル製造業時代の幕開け
|