written in 2010/7/3
事例:HGTV.com 他
日本人は手先が器用でモノ作りが得意と言われるが、DIYに関しては意外と消極的である。たとえば、自宅の外壁が汚れてきたため、塗り替えをしたいが、その作業を自分でやろうとする人は少ない。その理由を探っていくと、日本では職人の技量が非常に高いため、「塗装はプロの仕事で、素人には無理」という認識が暗黙のうちに出来ているようである。
しかし簡単なリフォームでも、プロの業者に頼むと数十万円の見積もりになるため、なかなか自宅の手入れもできないのが実情だろう。世界の住宅寿命を国際比較すると、日本の住宅が26年、米国が44年、英国が74年という違いがあるが、これは建物の構造の他に、家のメンテナンスや手入れをどこまでしているのかという違いもある。
《住宅投資にみるリフォームの割合(国際比較)》
これまで、日本の住宅業界に関わるプロの職人は、主に新築の仕事で生計を立ててきたが、既に国内の住宅数は世帯数を上回っているため、これ以上の需要増を期待することが難しい。そこで今後は、新築からリフォーム業界に軸足を移すことが課題になる。ただし、従来の元請けと下請けの関係から離れないと、リフォーム市場で稼ぐことは難しい。
《国内の住宅供給数と世帯数の推移》
住宅リフォーム市場は、水廻り設備、内装、外装、屋根、エクステリアなどを中心に年間6〜8兆円の市場規模があるとみられている。しかし、リフォームは新築や建て替えに比べると、依頼者からの要望や施工内容が多種多様なため、それを住宅業者が丁寧に対応していると相当なコストがかかってしまう。そのため業者が算定する見積金額は、割高に設定しないと採算が合わない。国土交通省の調査によると、リフォームにかかる平均費用は約180万円となっている。
《リフォーム原価の内訳》
《リフォームの平均工事額》
しかし1カ所の改修に 100万円以上の費用がかかってしまうリフォームでは、普通の家庭が定期的な手入れをしていくことが難しい反面、下請けとして実際の作業を請け負う職人にとっては、新築に比べると割の合わない中途半端な仕事である。そこで欧米のように、住宅オーナーが自らDIY型で自宅のメンテナンスをして、プロの職人がその作業をサポートするような形にすることが望ましい。
米国ではリフォーム職人の中から“DIYエキスパート”と呼ばれる人達が登場して、彼らがDIYの新しいアイデアやワザを紹介することで市場を盛り上げている。その仕掛け役となっているのが「HGTV」のようなリフォーム専門のテレビ制作会社の存在。同社は全米ケーブルテレビの専門チャンネルを通して、8千万世帯以上の視聴者を獲得している他、ネット上の「HGTV.com」にも月間
520万人のユニークユーザーが訪れている。
VIDEO
このようなリフォーム番組は、ただDIYの技術を教える堅苦しいものではなく、全米から腕自慢の職人を募集して、課題として提示した家のリフォームを競わせるようなエンターテイメント性を持たせている。そこでの優勝者は、他のリフォーム番組の司会者として抜擢されたり、住宅設備メーカーのCMキャラクターに採用されている。DIY市場が成長していく中では、従来はあまり目立てなかかった下請け職人が、カリスマ的な存在に変わりはじめているのだ。
(海外ネットビジネス事例一覧へ )
●職人からDIYエキスパートへ転身する発想
●住宅リフォーム市場におけるDIYエキスパートの役割
●DIY市場を後押しするハウツーサイトの台頭
●米ハウツービデオサイトのビジネスモデル
●DIY消費者と下請け職人のマッチングモデル
●職人と施主の直取引による住宅リフォーム
●健康と安全性にフォーカスした食品分野のDIY市場
●アマチュアメーカーに向けたワイナリービジネス
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JNEWS LETTER 2010.7.3
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