written in 2010/2/3
事例:eClinicalWorks 他
個人にとっての重要データといえば、資産に関する書類の他に、自分や家族の医療情報がある。外出先で急病や事故に遭った場合には、持病や既往歴の情報がすぐに入手できるか否かにより、救命率は大きく変わってくる。急病でないにしても、過去に病院で診察を受けたカルテ、CTやMRIなどの画像は、複数の医師や患者との間で共有すべき情報である。
しかし日本の現状では、各病院の医療情報は別々に管理されていて、患者にも開示されていないケースが大半だ。一方、米国では各種の医療情報を電子化して共有しようとすることが、“Health2.0”の大テーマとして掲げられている。電子化された医療情報は「エレクトリック・ヘルス・レコード(EHR)」と呼ばれ、各病院が患者のカルテや処方箋、医療画像を共同管理することで、治療を効率化できる利点に加えて、無駄な医療費を削減することができる。
米国では、一回のCT検査でも10万円程度(日本の約3倍)の費用がかかるため、高度(高価)な医療情報の共有は患者側にとってもメリットが大きいのだ。さらに、違う病院に通うたびに同じ検査をすることによる放射線被曝のリスクも抑えることができる。
EHRの仕組みは、病院やクリニックが患者のカルテを電子データとして保存できるサーバーを院内に設置することが以前は主流であったが、近頃では外部のサーバーから機能をレンタルできるASP方式へとシフトしている。これには、病院が設備投資を抑えられることの他に、患者の個人情報を敢えて院内に置かないことにより、診療の透明性を高められる利点がある。病院に対して電子カルテ機能を提供する業者のことは、EHRブロバイダーとして有望視されていることから、各業界からの新規参入がある。
《EHRブロバイダーの仕組み》
その中でも「eClinicalWorks」は、米国で3万人以上の医師に使われているEHRシステムで、月額 100ドル〜の安価な料金体系で主に中小クリニックを顧客対象としている。医師はネット接続されているパソコンのWebブラウザーから、eClinicalWorks側のサーバーに保存されている各患者の電子カルテにアクセスすることができる。また診療費の会計業務や、患者の来院予約とも連動しているため、このシステムだけでほとんどの病院業務をIT化することが可能だ。
さらに患者の情報は、主治医だけでなく他の医師とも共有できるため、不適合な治療や投薬の組み合わせを防ぐことができる。情報共有できる対象は、同じ病院内の医師だけではなく、同システムを利用している他の病院にまで及び、珍しい症状の患者を診察する際には、電子カルテのデータベースから検索をして、同じ症例の患者を担当している医師への相談をするような使い方も考えられている。
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