written in 2009/1/19
事例:インターナショナル・テレラジオロジー
これから“有能”と評価される人材は、高度な専門知識や技術を持つことが必須条件で、それに該当する人材が不足しているからこそ、他の人よりも高い報酬が提示されるのが労働市場の原則だろう。しかし引く手あまたの人気職だからといって喜んでばかりはいられない。
「医師」は求人倍率(約6倍)からしても平均年収(約1300万円)からしても間違いなく人気職といえるが、彼らが抱えている悩みは“忙しすぎる”という過剰労働の問題だ。厚生労働省の調査によると、病院に勤務する医師の平均労働時間は66時間/週で、法律が定める週40時間よりも20時間以上も長い。しかも夜間の当直や休日勤務で時間が不規則な上に、仕事が明けた帰宅後でも急患があった時には呼び出しを受ける「オンコール待機」という制度があるために、実際に仕事に拘束されている時間はそれよりも長い。
《年齢別にみた勤務医の平均労働時間/週》
| 男性医師 | 女性医師 |
30歳未満 | 77.3時間 | 73.1時間 |
30〜34歳 | 71.2時間 | 64.2時間 |
35〜39歳 | 69.7時間 | 61.3時間 |
40〜44歳 | 68.6時間 | 59.6時間 |
45〜49歳 | 64.9時間 | 58.5時間 |
50〜54歳 | 63.8時間 | 60.2時間 |
55〜59歳 | 60.4時間 | 56.6時間 |
60〜64歳 | 55.6時間 | 43.8時間 |
※法定労働時間は週40時間
※出所:厚生労働省
1ヶ月の時間外労働(残業時間)が80時間を超えると過労死のリスクが高いと言われており、医師達はそれに該当する職業といえるが、高齢者の増加によって患者数は増えるばかりで仕事量が減る見込みはない。eビジネスの現場で働くIT人材にも同じことが言えて、連日の深夜残業によって、うつ病を発症する男性社員や、1年以上も生理が無くなってしまった女性社員もいるほどだ。
高度な専門人材になるほど“代役”を社内で作ることが難しくなり、自分一人で重荷を背負ってしまうというのが実情だが、それを回避する方法を見つけることが高度人材の労働市場における次の課題だ。ここには新たなワークスタイルを作るための商機が見込める。
そのヒントになるのが、欧米で広がっている放射線医師の新たなワークスタイルである。CTスキャンやMRI(磁気共鳴画像装置)など高性能なレントゲン機器が普及してきたことにより、撮影した患部の映像から症状を判断する放射線医師の数が不足している。CT画像の診断には専門的なスキルが必要なために、患者の担当医が直接行なうのではなく、放射線医師が読影した診断結果から担当医が治療を行なうのが正しい。
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JNEWS LETTER 2009.1.19
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